第22話 生徒会の天敵はより、あくどい
「……仲間割れはしない、か」
指揮車に戻った征治朗は甲冑を解除し、シュウたちの暗号無線を解読、傍受していた。
(桜塚に提示した勧誘条件。吸血鬼を殺するか否かで、意見が割れることもありえた……が、大した違いはない。桜塚たちが俺の誘いに乗らずともな)
校舎を囲む装甲車のカメラが送ってくる映像を見ながら、無感動に考える。
征治朗にはシュウを本当に部下にするつもりなどなかった。
それでもシュウに誘いをかけたのは、征治朗が時間を稼ぎたかったからだ。
『……|現着≪げんちゃく≫しました』
私兵とも言える部下の無線連絡に、征治朗はかすかに笑う。
「ちょうどいい頃合いだ、急いで準備にかかってくれ」
『了解。ただ校舎を囲う防御結界を張るまでに、連中が逃げ出したりは――』
「桜塚には猶予時間を与えてある。こちらが強攻策に出ん限りは下手には動かんだろう」
『それが単独突入の真意ですか。真っ向勝負では敗北すると理解させ、策を練らせると』
「ああ、俺の目論見通りに連中は校舎に釘付けになってくれている」
『例の試験にはうってつけですね。退魔士、吸血鬼と一般人のサンプルがそろっている』
「あとは桜塚を捕らえれば日彰の研究が手に入る。鬼道術兵器が実用化される日も近い」
『――急ぎます。報道陣の退去はお任せを。連中が大量の爆薬でも所持しているとでもします』
頼む、と告げて征治朗は無線を切る。不意に思う。
(光栄に思え、日彰。貴様が吸血鬼を救おうと作った血清は、吸血鬼を今まで以上に殺すぞ)
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