第4話 悪徳生徒会の敵は、なんか可愛い
琴音との物騒な会話の後、シュウは文化祭向けの罠を校内に仕掛けて回っていた。
文化祭で罠を仕掛ける。おかしいが悪徳生徒会が仕切るとおかしくなるのは普通なのだ。
ともあれ、とある教室の扉に手をかけた時、暗号使用のスマホに繋いであったワイヤレスイヤホンから雫の声が入った。
『例によってあたしらの天敵サンが隠れてるから、気をつけなさいよー』
ため息をこらえつつ、シュウは扉を開ける。ちなみに教室内は文化祭を備えて、金魚すくいの屋台が設置されていた。屋台そのものは、極道な雫の人脈によって調達された本物だ。
で、その屋台の陰から一人の少女が立ち上がった。
「きょ、今日こそ、私が悪徳生徒会の横暴を止めますっ!」
敵対宣言をしてくるのは、風紀委員長の|甘木楓≪あまぎかえで≫だ。胸元まである天然の茶色い髪をお下げみたいに二つに結び、くりっとした小さな目をせわしなく動かしている。
そんな小動物感溢れる彼女はそれでも、悪徳生徒会の暗躍を止めようと日夜努力している。監視のために、こうして張り込んでいたりするのだ。
「そっか、俺らの活動を止めちゃうか。なら、今すぐ帰ろうかなー」
「え、それはだめっ! 文化祭の準備はしなきゃ、先生たちに怒られちゃうよ!?」
手を振り回して、あわてふためく楓。善人な彼女には、悪徳生徒会を止めることなどできない。楓はきっと学校を勝手に改造――監視カメラ網を仕掛けるとか発想もしないはず。
そもそも風紀委員会を放ってあるのは、悪徳生徒会への抵抗勢力を一カ所に集めておこうという雫の独裁者的な策謀だし。
「おう、任せろよ。俺らは文化祭を成功させるために頑張るぜ」
「な、なにその悪っるい笑顔っ……! なに企んでるのっ、もうっ!」
「おぉ、鋭いな。企んでるぜーお前の想像以上の悪事をなァ」
「だ、ダメだよっ! 去年みたいに打ち上げ花火とか、学校に迷惑なのはっ! 後始末、大変だったんだからねっ、もうっ! 委員長の私まで怒られたんだからぁっ!」
「はいはい、俺らも大人しくやるよ、今年はさ」
「ううう……去年も似たような台詞を聞いた気もする」
「人間はそう簡単には変われねぇーよ、俺もお前も」
「ああううっ、ばかにしてっ! 今年は、私が悪徳生徒会に勝っちゃうんだからねっ!」
言い捨てた楓は見回りのためにか、教室を出て行った。
「……あらゆる意味で善いヤツだ」
ニヤけながら、シュウはこの教室にトラップを仕掛けた。
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