モーパッサンはお好き ᕦ⊙෴⊙ᕤ

柊圭介

はじめに

 突然ですが、あなたはモーパッサンをご存知ですか?

 だいたい1880年ぐらいから1890年ぐらいまでめちゃめちゃ活躍していたフランスの小説家です。フルネームはギ・ド・モーパッサンといいます。


 僕はモーパッサンが大好きです。

 どれぐらい好きかというと、もし生きていれば色紙に「ケースケ君へ」なんてサインをもらって、床の間に飾りたいぐらい(床の間はないけど)。寝る前のモーパッサンタイムが至福のひとときです。モーパッサンを読んでいるとメトロの駅を乗り過ごします。

 パリのサンジェルマン界隈には、文豪の直筆サイン入りの手紙なんかを売っている店があって、ユゴーとかゾラの書いた手紙が店頭のウインドーに飾ってあるのですが、モーパッサンの手紙を見た時は本気で70ユーロ出そうか悩みました。(貧乏なので結局あきらめてガラス越しに写真を撮りました。)


 まあそれぐらい好きということです。


 カテゴリーとして創作論・評論とかいうジャンルに入れてしまうぶしつけをお許しください。モーパッサン論なんてあふれるほど世の中にあるのに、僕のような人間がモーパッサンを語るのは生意気だということは重々承知しています。僕は学術的な評論はできません。そういう内容をお求めの方は文学教授の論文をご覧になった方が役に立つと思います。


 そもそもフランス文学なんてなんか気取ってね? とお思いの方、それは違います。

 確かに、ちょっと手が出にくい印象があるかも知れません。

 説明が長すぎて何の話だったか分からなくなるバルザック先生や、ひとを落ち込ませるのが目的ではないかと疑いたくなるゾラ先生などもいらっしゃいます。だけど、気楽に読めるフランス文学もあるのです。ここでモーパッサン先生の登場です。


 まず、この人は短編がほとんどです。だから「まだページがこんなにある~」と思う前に話が終わります。あと、文章が端的で分かりやすいです。キャラクター設定もはっきりしています。だから非常に読みやすいのです。


 では彼はどんな文章を書くのでしょう。僕はモーパッサン愛が強すぎて、自分の小説の中で、主人公にモーパッサンについてこんなことを言わせています。


「冷たいようでいて情があって、読んでいると人間が所詮は滑稽な動物でしかないと思えてくる」


 生意気ですね。ごめんなさい。

 モーパッサンはいわゆる自然主義の作家です。だから市井の人々の暮らしや人生を、大袈裟に盛り上げることなく淡々と語ります。この乾いた調子に皮肉や優しさが入り混じっています。これが彼の最大の魅力です。


 それから彼の作品はエロいです。

 おっと、食指が動きましたか。正直ですね。

 でもそういう意味ではありません。

 そもそも当時は性表現なんてしちゃったら刑務所ですから、恋愛の話であろうが生々しいものは一切書いてありません。匂わせてあるだけ。しかし、その匂わせ加減が余計に想像力をかき立てるのです。

 そして、内容にかかわらず、彼の文章自体に、人としての色気とでも言いましょうか、そういうものが立ちのぼっています。ここにも魅力を感じてしまうのです。

 

 お分かりいただけたでしょうか。

 ああ、ただの導入のつもりがこんなに長くなってしまいました。ここまで読んで下さった方、どうもありがとうございます。


 次からいよいよモーパッサンの作品を取り上げて褒めまくります。

 今夜も枕元にはモーパッサンがいます。

 幸せです。

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