第155話 いざ、海底遺跡探索へ

大変長らくお待たせしました。

応援する、星レビューにも感謝ですが、中々ないレビューコメントありがとうございます!










 階段を下った先は、先程の部屋のような空間とは大きく異なり、先の長そうな一本の通路になっているようだった。

 四角錐という外見の巨大建造物のわりに窮屈な作りというのに違和感を覚える。


 その事にソリトは顔を顰めながら、視線を前に向け、警戒したまま片膝付いて肩に掛けていたリュックをおろし、右手に展開している火を灯したまま、袋から木棒と液体の入った小瓶を取り出す。


 木棒の先端には予め布を巻いている。

 小瓶の蓋を開け、中に入れていた油を布に染み込ませる。

 そして、ソリトは油の染み込んだ布に火を移し、松明を完成させた。


「用意が良いですわね」

「探索する場所は海底に沈む未発見の建造物。明かりは無しと考えるべきだ。なら、松明の材料は必然的に用意がいる。予備も一本用意してる。他にも床が崩れた時のロープとアンカー、念の為の寝袋と食料。調理具。調理具用のナイフとアンカーは武器に一応なる。水薬類は腰のポーチに。それと迷った時の方位魔道具。マッピング用の紙とペン。これは別の入れ物に入れて袋に収納してある」

「それで少し大きいのですのね」

「ああ」

「…………」


 突然、クティスリーゼが黙り、思い悩むように少し頭を捻りだした。


「水薬と食べ物はありますが、寝袋は…」

「予備がある。万が一の時はそれを使えばいい」

「では、お言葉に甘えさせたいただきますわね」


 クティスリーゼは、そういえばと言って話題を変えて尋ねてきた。


「荷物、袋ではなくバッグの方が良いのではなくて?」


 その疑問にソリトは、しかし、と返して即答した。


「バッグは背負う分、楽なのは確かだ。だが、もし敵がいて後ろを取られた場合引っ張られる可能性がある」

「その点、袋は片側だけ。捕まってもすぐに捨てて逃げられるという事ですわね」

「ただ中身の事もあって、材質は壊れにくいものにしないと不味いのが点だけどな。まあ、バッグに比べればマシだ」


 ここで立ち話をしているよりも先に進む時間が惜しい。

 そうして、ソリトが先行してクティスリーゼと奥へ足を歩ませ、そのまま何事もなく二十メートルは直進したであろう突き当りに到着すると、道が左右に分かれた。

 とりあえずこちらから行ってみようなどと適当に判断して進むのは危険だが、今回はあくまで探索。


 要はマッピング。

 マッピング用紙一枚とペンを取り出し、スタート地点から今いる地点までを書き終え、落ちていた小石を拾うソリト。

 どちらに進んでもいいが、慎重には進むつもりではある。

【気配感知】で警戒しつつ、分かれ道に遠くへと放り投げる。

 発生した反響音の大小で距離感が測定出来る。

 音が小さければ小さいほど長い距離に、逆は短い距離になっているといった具合だ。


 その結果、左の方が音が大きく、右の方が小さいことが判別出来た。


「エコーロケーションですわね。エルフ種の方はそれで建物の構造まで把握できると本に書いてありましたわ」

「他にも索敵や経験で山賊みたいな盗賊の罠の探知も出来たりする。かえってくる音の中の違和感で判別してるそうだ。逆に耳が良いから、耳に意識が行かないように散漫にしてるらしい」

「初耳ですわ」

「それで戦闘や盗賊の巣窟に潜入が楽になってたからな」


 今では腹立たしく思っているが、それは口にしない。

 クティスリーゼに言っても、相手の気分を害するだけだからだ。

 それに、本当に自分の事を異性として好きと思っているなら、アバズレエルフ女と察しはするだろうが、それでも名前を口にしない方が良いだろう。と、考えながら、ソリトは話を戻す。


「それより、先ずは左から行くぞ。聴いた感じだと距離的には左が短い。ここは昔の遺跡だろうし、右から行っても何処かで繋がってるだろうけど、なるべくマッピングをしておきたい」

「……では、マッピングは私が致しますわ」


 嬉しそうに微笑み、クティスリーゼは用紙とペンをお渡しいただけないかと両手を出す。


「失くすなよ」


 不器用に注意をして、ソリトがマッピング用紙とペンをクティスリーゼに手渡すと、気を付けますわ、と言ってクティスリーゼは受け取った。


「あら、意外とマッピングは不慣れなのですね」

「るっせぇ!」


 へぇ~と言いそうな小さく驚きながら、彼女に痛い部分を言われ気恥ずかしくなったソリトは、頬を赤くして虚勢を張って声を上げた。


 シスターマリーから将来何が役に立つかはわからないからと、シスターの字書きの他に絵描きを教わった。

 しかし、基礎を教わって努力はしたがやっと他人でも分かる位になる程度にしかならなかったのだ。

 センスの無さはいつもの事と何か才能があると高望みしていない。

 していないが、改めて他人に言われ、ソリトの中から悔しい気持ちが湧き上がった。


 それとは裏腹に、ソリトもクティスリーゼも一応の警戒をしつつ、道の突き当りに着き、右に続く道を曲がり、通路を抜けた。


「……密林ッスね」

「それも沼地の多い」


 その先は大きな密林だった。所々に沼地があり湿気の高い地帯となっている。更に、木々のどれもが七十メートルはある異常に太長いものばかりで、植物も全体的に五メートルはありそうだ。


「……最悪ですわ」


 口にしたクティスリーゼは警戒の他に緊張、驚愕、怯えが視える程に少々蒼白し、強張った表情をしていた。


「ソリト、ここはおそらく…いえ、間違いなく…ダンジョンですわ」


 一度は推測で述べようとした所を、彼女は否定の一言を入れて、ここはダンジョンだと断定して言い直した。

 推測で留めるよりも断定して言った方が、警戒心を緩めずに済むからだろう。

 それでも歯切れが悪いのは、根拠となる要素が少ないのだろう。


「マスターさん、クティスリーゼさんの言う通りッス。ま、間違いないッス…ここは、正真正銘ダンジョン化した…建物ッス……」


 後に続いて、聖槍が言った。

 聖槍の方は歯切れが悪いというより、声量が小さいだけで、断言するだけの芯がある。

 根拠があるようだ。


「お、お烏滸がましいかもしれないッス…けど……ま、前にもこの島には来たことがあって…ダンジョン化した場所は、そこに適した所、だったり…洞窟とか、この建物みたいに、何故か、あり得ないような場所になったりするッス……信じられないッスよね…」

「最後の聞くと信じる気失くすわ」

「すみません、すみません、すみませんッス!」


 直角で頭を下げ続けている姿が目に浮かぶように何度も謝る聖槍。


わたくしは信じますわよ」


 それは逆効果だと思う、とソリトが思っていた直後、


「慰めなんていらないッスよ。自身を喪失させる卑屈底辺の聖槍って、はっきり…そう言ってくれていいんスよ……」

「逆効果でしたわ!」

「すすすみませんッス!うちなんかが迷惑かけるなんて」

「そんな事ありませんわ。聖槍様を始め、聖剣達の経験がご迷惑になる事等ございません。先に言っておきますが、これは慰めではございません」

「あ…はぉ…うぅ…」


 逃げ道を塞がれた聖槍が小動物のようにプルプル小刻みに震えている…様に不思議とソリトは感じながら、自分に背負わている聖槍とクティスリーゼの話の間に割って入る。


「一旦分かれ道まで戻って右側の先を確かめる。同じ場所に出たるならそのまま進む。何もなければここに戻って、何かあればどっちから進む要相談。それで良いか?」


 そう聞くと、クティスリーゼは目を瞬かせて、ソリトを呆然と見つめ始めた。


 あなたがそんな事を尋ねるなんて意外ですわ、なんて言いそうな表情。

 その顔には凄く覚えがあるソリト。

 聖女揃って似た事を言ってくることもあって、いたたまれなくなり、そっぽを向く様に正面に向き直っては、クティスリーゼの方……というよりも一度分かれ道へ戻るために踵を返す。


「……戻るぞ。さっさと来い棒切れ!」


 棒立ち故に棒切れと、雑言で誤魔化しながらクティスリーゼの横を通り過ぎる。

 その時、彼女がその言葉に瞳をハートにして、悶えていた事にソリトはスルーすることにした。


「棒切れ、スティック……雑に、もっとボロクソにぃ〜……はぁ〜ん!」










――

どうも、翔丸です。


すみません。

最近仕事詰めだったもので、疲れて書きながら毎回寝落ちしてましたw


短くてすみません。

待たせ過ぎて申し訳なくなった次第です!

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