第145話 濃霧の幽霊船 その3
お待たせしました。
少しずつ書いていた所、先日親族関係でのことに一先ず安心できる様になりました。
大変ご迷惑、ご心配お掛けしました!
コメント、応援、凄く元気を貰えました。
コメントは別の所で大事に保存させていただきます
「意外としっかりしてるもんなのね〜」
「おっさんから見てもそうならそうか」
「それ、どういう事よ」
「おじ様が胡散臭いからでは」
「おじ様…やっぱり良い響きだぁ〜」
「……とりあえずここを探索するぞ」
幽霊船へ降りたソリト達。
早々に甲板を探索した結果、長年放置されていたとは思えない程の状態だった。
甲板は潮風で傷んではいたが、全員が強く踏み付けても、崩れることのない丈夫さを保っていた。
しかし、襲撃にでもあったのかもしくはその場所だけが腐っていたのか大小ニヶ所、甲板が崩れ落ちていた。
他にも甲板を帆柱と帆を張るロープが傷んでいた。
今すぐ切れるような事はなさそうな保存の良い状態で張られていたが、甲板にある帆を操る為のロープと帆を畳む為のロープの方は切れていた。
きっと、この幽霊船は風に振り回されてここまでやってきたのだろう。
「駄目だ、開かね」
帆柱の後ろにある甲板室、船楼とも呼称される三階建ての構造物。
全階層に扉があるのだが、外側から全甲板室に入るためには登り下りする為の梯子がある筈が、見当たらなかった。
仕方なしに、ソリトは各階の甲板室に続く広間に跳び乗って扉を開けようとしたのだが、ドアノブが回るだけで全く開かなかった。
扉を破壊して強行突破を試みようとソリトは拳を構えた。
しかし、
「止めてください!壊した瞬間霊に取り憑かれたら、そうでなくても呪われたらどうするですか!止めて、止めろ!壊さないで、壊すなあ!」
情緒不安定なのかと疑いたくなる程にルティアが必死に制止してきた。
前回ルティアに呪いを与えてしまっていることもある。
扉を破壊して彼女の言った通りの事が起きてまた、同じ過ちを犯してしまう可能性もなくはない。
ソリトは強行突破は止める結論を出して拳を下ろした。
ただ、制止のしつこさに少し、ほんの少しだけイラッときたソリトは、数分だけルティアの怖がる反応を楽しんでから、甲板下から探索することにした。
「私をイジるソリトさんの楽しそうな表情の方が怖く感じてきました」
「そうか。なら、二手に分かれるか」
「怖くないとは言ってません、どっちも怖いです!」
ルティアは食い気味に、私はまだ幽霊怖い、とソリトのコートを掴んで主張する。
だが、そのままソリトはルティアを引きずる形で階段を使って甲板下へと下りていった。
船内先は鏡に溢れた通路だった。
外見は古びており、天井に吊るしてあるランプの炎は青く揺らめいている。
「あるじ様、ドーラがもう一人いるんよ!」
「イヤアアアア!」
普通に沢山の鏡に映った自分の事を見て話し掛けただけなのだが、ルティアは両腕を上げて小刻みに怯える。
ソリトの方が怖いという暗示は一瞬にして無に帰した様だ。
「本当だな……待て、い…【癒し】の背後に変な影が」
「あああああああ!!」
叫び声を上げながらルティアは凄まじい勢いで通路奥の階段に消えって行った。
しかし、何故か叫びながらソリト達の所まで戻ってきた。
「な、ななな何かいます!」
「まあ居ても可笑しくはないな」
「何でそんな平然としてるんですか?」
今にも泣いてしまいそうな状態のルティアに尋ねられた後、ソリト達は隙間なく答えた。
「慣れ」
「楽しそうだからですわ」
「面白そうなーん!」
「おっさん以下同文」
「私が、私が可笑しいのでしょうか?」
それから、また階段下りて行った先は前と同じ造りの通路だった。
しかし、一つ違うのはルティアの言っていた通り、何かがいると言うこと。
「【気配感知】に反応はあるんだがな……これは本物が出たか?」
直後、ルティアが震え怯えながらソリトに飛び付こうとして、クティスリーゼに抱き着いた。
気遣う理性は残っているらしい。
ちなみに、クティスリーゼは合法的に抱き着けているものの、クロウという存在がいる為に素の自分を
ただ、我慢している所為か目が血走って恐ろしい形相になっている。
幽霊やり先に聖女が怖がる対象になるかもな、なんて事を考えながら前に視線を戻した時、気配の正体を見つけた。
直視では視えなかった。
しかし、船内通路に左右壁に端から端まで取り付けられている鏡にはしっかり映っていた。
「きゃ!」
「なんかでたんよ!?」
ソリトが認識したからなのか、鏡に映っていた魔物達が目の前に現れた。
その瞬間、一体のイカリ型の魔物が襲い掛かってきた。
「デタぁアアアアアイカリのユーレェェー!」
怯え過ぎて魔物と幽霊を判別出来ずに、ルティアがクティスリーゼに抱き着きながら気を失った。
「アンカーガイストマンとガイストボーイだね。認識したら見えるちょいと厄介な魔物だね。油断禁物よ」
「アドバイスどうも。ドーラ、聖女二人を守ってやれ」
「りょーかいやよ!」
「行くぜ、流星閃!」
「じゃ、おっさんもスターダストショット!」
手始めにソリトは、蒼白の光の剣閃をアンカーガイストマンに向けて放つ。
その直後、クロウの武技名を唱えた声がソリトの背後から聞こえると同時に、横から青白い光を纏った矢が通り過ぎた。
ソリトは一瞬振り返った。
視界に映ったのは何処から取り出したのか、左手に長距離タイプの弓を握り矢を射ったクロウの姿だった。
そうして、ソリトの武技はアンカーガイストマンへクロウの放った武技はガイストボーイに迫ったが、二体共に一瞬にして姿を消した。
するとクロウは、自分達の背後に半身を回して弓を引き、矢を放った。
矢は先を読んだ様に、クロウの背後に現れたガイストボーイに迫り突き刺さった。
ガイストボーイは後ろに倒れていくが途中で止まり、ギュルッと勢いよく起き上がると、残念でしたと馬鹿にするようにケラケラ笑い出した。
「笑うのは構わないけど…矢、取ったほうが良いよ〜」
クロウが飄々とガイストボーイに情けをかけるように注意をした瞬間、ボンッと内から爆発して散り散りとなった。
「だぁからおっさん言ったのに」
クロウの戦闘の展開を称賛しつつ、ソリトも背後に現れたアンカーガイストマンを相手にしていた。
接近して、斬り掛かれば幽霊の如く消え背後に回り込まれ、時に囲むように移動して翻弄してチェーン腕を振るい錨を放って攻撃を繰り出してくる。
だが、比べるもなくアンカーガイストマンよりもバルデスの方が圧倒的に速い。
そうして、正面に来た瞬間、ソリトは一瞬でアンカーガイストマンへ向かって踏み込み、横一線に斬りながら通過し、続けて背後から速度を上げて急速接近して斬り上げ真っ二つにした。
『アンカーガイストマンを討伐により全能力が上昇します』
『武技:瞬狼剣習得』
戦闘が終わるとゆっくりとクロウが歩いてソリトの方へやって来た。
その時、クロウの手には不思議な事に弓はなかった。
武技を使っていたという事はスキルではないだろう。
ならば魔道具かというと、それらしき物や物の膨らみが見当たらない。
だとすれば、弓に何か仕掛けがあるのかもしれない。腰にあるのかもしれないが、ダボっとしたガウンで判別は難しいだろう。
直接尋ねるとしても、クロウは必ず〝はぐらかす〟。
ソリトの中でそんな予感が強く主張していた。
「青年、余裕だったねぇ」
「それはおっさんだろ。パターン分かってたのか?」
「まあ、大体はね。おっさん経験豊富だから」
「へぇ」
クロウの経験の豊富さには興味無さげに返事をしながら、ソリトはルティア達の一応の安否確認に行った。
「あら、おっさん振られちゃった」
後ろから軽い冗談が聞こえてきたが、ソリトは無視して、クティスリーゼとドーラに話し掛ける
「二人、無事か?」
「うん」
「ええ、問題ありませんわ。さあ探索を再開しますわよ」
「待て。とりあえず、お前に抱き着いて離れない気絶聖女を起こせ」
「このままでよろしいのではないですか」
離れるのが嫌なのか、クティスリーゼはルティアを起こそうとしない。
しかし、気絶したままは足手まといでしかない。
時間が惜しいので一旦船へ戻る事は避けたい。
それに、怖いから着いてきた方が安心出来ると言いくるめられて、ここまで来たのはルティアだ。
最低でも起きてもらわなければ、とソリトは右手で拳を作った。
「起きろ!気絶聖女ぉー!」
「ったーい!!」
頭頂部を両手で押さえながらルティアは意識を取り戻した。
「起きたか。なら行くぞ」
「行くぞじゃないです!殴りましたよね?殴ったのソリトさんですよね?」
「そうだが?」
「は?何当たり前のこと言ってんの?お前ってそんな馬鹿だった?みたいな顔しないでください!」
「おぉ、お前のその過剰な察し久しぶりに見たわ」
「あぁ!そういえばそうですねぇ…じゃないです!」
ノリ良くツッコミを入れてくれているが、ブレイク達を待たせるわけにも行かない。
ソリトはルティアとのやり取りを切り上げて通路を進んでいった。
―――
登場人物紹介ルティア。
嫌いな物/悪霊(アンデット系魔物、無害な霊は除く)を解放。
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