幼馴染の恋人に裏切られパーティを脱退した勇者のスキルが【反転】する〜何故か偶然出会った聖女が付きまとってくる(放っておけないだけです)が無視だ(しないでください!)〜
第108話 即席パーティの奮闘。お待たせ!復活のソリト
第108話 即席パーティの奮闘。お待たせ!復活のソリト
「戻ってきたか」
ファルがカロミオ達を引き連れて戻って来ると、鬼人な魔王四将は腕を組んで待っていた。
「そこの三人が共闘者という事で良いかな?」
「ええ」
「一つ忠告しておく。私と手を抜いて戦おうとは思わないことだ」
プレッシャーの感じる声にファルはコクっとゆっくり頷く。
「私も一つ聞きたいんだけど、何でクロンズ達を都市の近くに離していたの?」
「簡単な事だ。邪魔者がいてはお前達は戦い難いだろう」
「愚問だったね」
「フッ…では始めよう」
鬼人の魔王四将は組んでいた腕を下ろし、軽く腰を落とした。
その瞬間、カロミオもガントレットを着けた腕を前に構え、ラルスタも背中の大剣を抜き構える。そして老執事は中衛、ファルは全体を見渡せる位置まで後衛に下がった。
位置に着いた直後、ファルは右人差し指に嵌めていた小さな青紫色の宝石の付いた指輪を外した。
「「「っ!?」」」
ファルの雰囲気が変わった事を感じ取ったのかカロミオ達が一斉に振り向く。鬼人の魔王四将は、それで良いと言うように笑みを浮かべた。
この指輪はファルが錬金術師に頼み造って貰った魔道具だ。効果は装備した者のレベル、ステータスを減少させる。
その指輪を外したファル本来はこうなる。
ファル
職業 賢者
レベル41→71
スキル【賢者】
適性魔法 火魔法・風魔法・氷魔法・補助魔法・幻影魔法
旅の合間にクロンズ達の目を盗んでは、ソリトとは別の場所でレベリングを行ってきた。
ソリトが抜けてからはクロンズの相手をさせられることが多くなり短時間しか出来ていない。
レベルとステータスを下げてまで隠してきたのは、実力が近ければ注目が分散し、勇者パーティ全体として注目される。多少でも一人だけ注目されるよりは自由に行動しやすくなるだろう。そう考えての事だ。
そして、レベリングを続けていた理由は、予想外の事態に遭遇した場合に備えての事だ。今の状況のような。
とはいえ、自分が何処まで出来るか、ファル自身正直分かっていない。
それでも、中央都市アルスを守るためにはやるしかないと、ファルは杖を構え魔法を詠唱した。
「風の精霊よ、風を吹き刺せ〝ツヴァイブ・ウィンドショット〟!」
鬼人の魔王四将に向けて中級風魔法を放った。
紙一重の距離を身体の左半身だけを動かしてファルの攻撃が避けられ、鬼人の魔王四将が右半身を見せるとラルスタが大剣を背中へ向けて振り下ろした。
だが、体を半回転させて大剣は弾れた。
そこへラルスタの背に潜んでいたカロミオが間髪入れずに拳を繰り出す。後方に下がりながら鬼人の魔王四将は蹴りを加えた連撃を防いでいく。
すると、後方に回っていた老執事がナイフを三本投げる。
ここに向かっている間にラルスタから老執事のスキルは【暗殺者】であることをファルは聞いた。
その効果の一つで気配を消して回ったのだろう。
攻撃を確実に当てるためにファルは魔法で援護しようと詠唱する。
しかし、ファルが唱える前に鬼人の魔王四将はカロミオの顎に下から一発入れ、背後から来るナイフを大きく後ろに飛んで回避し、老執事の背後に回ると半回転を加えた蹴りで反撃した。
一度体勢を整えようと、カロミオ達は後ろに飛び距離を取った。
「素晴らしい連携だ。では、次はこちらから行かせてもらおう」
そう言う鬼人の魔王四将の表情は楽しげだった。
一方、天空島にある湖の底では卵型の容器内部でソリトの治療が続けられていた。
雑音のない空間。
下から上へ小さく内部の水が流れ、口に取り付けられた管の付いたマスクからは空気が供給される。
目が覚めた時は困惑したものの、冷静になって状況を把握したソリトは、自分が水中にいる事を知った。
更に周囲にも意識を向け【気配感知】を発動した。
徐々に探っていくと自分の感知能力が唐突に鋭くなっている事が判明した。
そして、気配だけではあるがソリトは下界の一部の現状を把握することが出来た。
(知らない気配と
「どうしたこの程度か!」
暫く戦闘が続き、鬼人の魔王四将に凄まじい速度でカロミオは猛攻を受けていた。
猛攻に押され、カロミオは徐々に防戦一方を迫られていた。
「エアリアルウォール」
「衝波斬!」
ファルは風防御魔法で乱気流の風壁をカロミオの前に出現させると、鬼人の魔王四将に一瞬隙が生まれた。
その瞬間を逃さず、ラルスタが衝撃波の斬撃を鬼人の魔王四将へ放った。
大地を抉りながら襲ってくる武技をバックステップで回避された。
だが、ファルは鬼人の魔王四将との力の差を考えて、避けられることを予想していた。
観察し、敵の着地場所を予測し、味方の行動範囲の妨げにならない規模を想定し、ファルは魔法を詠唱する。
「火の精霊よ、彼の者に大地の怒りを浴びせよ〝アインス・ボルケーノ〟!」
着地直前、鬼人の魔王四将の足元から溶岩が小規模で噴出した。
「ぐあっ!」
鬼人の魔王四将が火魔法の攻撃を浴びながら噴出した勢いに空中は押し上げられると、老執事は跳躍しながら左手でナイフを一本投げ、右手に持っている短剣を握り締めて、鬼人の魔王四将の首へ向けて短剣を横に振った。
「…風刃脚・乱舞!」
「何だ!?」
「見たこともない技だ!」
空中に押し上げられた体勢を整えると、鬼人の魔王四将は空中で回転しながら、カロミオとラルスタも知らない不思議な蹴り技を繰り出し、風魔法のような風刃をファル達に向けて全方位に連続で放ってきた。
「ツヴァイブ・アイシクルウォール!」
氷の壁を出現させ、ファルは風刃から身を守る。
カロミオ達に視線を向けると、カロミオと老執事はダメージを最小限にしながら回避をし、ラルスタは大剣を盾にして攻撃を防いでいる。
「獅子王拳!」
相手の攻撃が止んだ瞬間、その隙を狙ってカロミオが獅子の形を成した拳撃を放ち反撃する。
「甘い!獅子王拳!」
鬼人の魔王四将も同じ武技を放ち打ち消した。
「はぁ…カロミオ【魂闘法】は使っているのか」
「使っているよ……っ全く、これでは【拳王】の名もスキルも泣くよ」
戦いを始めてから一時間近くが経過しており、息を大きく乱す程ファル達は疲弊している状態。
ファルは位置を変えながら援護、隙を見て反撃していた為に多少の疲弊はあるものの、三人と違いまだ余力がある。
それに対して、鬼人の魔王四将も息を切らしてはいるがファル達に比べれば息を整える程度の小さいもの。
三人のステータスを中級補助魔法で上昇させている。
更にカロミオは【拳王】のスキルの能力の一つであろう【魂闘法】を使っている。
その状態で、全力で戦っているというのに、相手にはまだ余裕がある様にファルは見えた。
明確に理解させられる力の差。
ファルは見込みが甘過ぎたと反省せざるを得なかった。
「中々にこの戦いは楽しいが…そろそろ、終わらせようか」
ファル達の方へゆっくり歩み始めた。
カロミオを殴り大岩にまで飛ばし落石に埋もれ、大剣で防御した剣身を折ってラルスタを地面に殴り落とし、老執事は気配を消して反撃しようとした所を気付かれ返り討ちに終わった。
でも、まだ息はある事が分かった。
「三人は後にして、次は貴様だ魔法使い」
「ねぇ、本当にあなた私達を殺す気あるの?」
「勿論ある。だが、言ったはずだ。条件である私に勝つことで見逃すと。そして、負けた場合はここにいる者達とあの都市の人間族全てを殺すと。つまり、お前が負けていない間、私は無駄な殺生はしない」
「へぇ、意外と紳士的なんだ」
戦いを選択した後悔はない。逃げて見捨てる選択の方が後悔する。
クロンズ達に封印されていた魔王四将を復活させて、近くの村の命を犠牲にした自分が見捨てるという選択で後悔するなど愚かな思考している事は自覚している。
「なら、私は、殺されるわけにはいかない!」
杖を地面に捨て、ファルはローブの中に隠していた剣を腰から抜いて中段に構える。
「アインス・パワー」
「アインス・ガード」
「アインス・アクセル」
「アインス・マジックガード」
「ツヴァイブ・パワー」
「ツヴァイブ・ガード」
「ツヴァイブ・アクセル」
「ツヴァイブ・マジックガード」
「精霊よ、我の能力を上げよ〝アインス・アレス〟」
初級、中級の補助魔法で自身の物理攻撃力、防御力、敏捷力、魔法防御力、最後に全ステータスを上昇させた、ファルは鬼人の魔王四将に突進し、横凪ぎに剣を振る。
だが、呆気なく攻撃は片手で受け止められてしまった。
「魔法使いにしては、鋭い剣筋だ」
「努力し続ける勇者に教わったから。言っておくとあなたが倒した勇者じゃないから」
「そうか。だが私には、勝てん!」
「私は、まだ死ぬ訳にはいかないの!」
剣を払い右、左と拳撃を放たれる。
下段から一撃目を何とか弾き、二撃目は剣撃を何度も繰り出して防いだ。
しかし、最後の防御で剣が折れてしまった。
「ツヴァイブ・ライト!」
「ぐっ」
光魔法で目を眩ましている間に杖を拾って剣のように杖の細い部分を握る。
「はあ!」
上段から振り下ろす。
命中はしたが、手応えが余り感じられなかった。
魔法使いはどれ程優れていても前衛に誰かいなければ魔法を使うのは難しい。
省略しているとしても、反撃しようとすればその隙に倒される。そう思いファルは近接戦を選択した。
その選択は正しかったのかもしれないが、同時に無謀だったのかもしれない。
それでもファルは、杖を武器に振るう。
その悉くを防ぎ、鬼人の魔王四将がファルに反撃の一発を入れる。
「っ…ぐ」
目の眩み、口から吐き出しそうになるモノを堪え、ファルは杖を鬼人の魔王四将の顎に向けて突き上げる。
顔を右に傾け回避され、突き上げた杖を掴まれた。
引き離す力は無い。ここは杖を一度手放すしかないと後ろに飛び退こうとした瞬間、顎に拳を入れられた。
杖から手が離れ、体が反れながらファルは空中に突き上げられ仰向けに倒れた。
「…………」
全身が痺れる。気が遠くなりそうな痛み。
顎骨も折れてはないようだが、大きくヒビは入ってるだろうな、と自分の状態を把握する。
もう楽になりたい。
楽になって泣き喚きたい。
そんな考えが頭に浮かぶ。精神的にも参り出しているらしい。
このまま大人しくしていると、余計に弱音が浮かびそうだ。
でも、こんな時ソリトなら弱音を吐かずに立ち上がりそうだと、ファルはゆっくりと四つん這いになる。
「ほう。気絶する威力で、突き上げ返したのだがな。それでもまだ立ち上がるか。それにまだ私に立ち向かおうとする意思があるらしい」
「…ぁ……ぃ」
顎の痛みで上手く話せない。
やはりヒビが入っているようだ。
「気が変わった。お前に関しては今すぐに息の根を止めてやる」
そう言ってファルの方へと歩いてきた。
「最後に名前を聞きたい所だが、上手く喋れないようだ。変わりに私の名前だけでも教えておこう。私の名はバルデス。魔王四将の一人だ」
名前を告げると、険しい表情で睨み続けるファルに、拳を構える。
「では、さらばだ」
凄まじい速度で拳が振り下ろされ、反射的に目を閉じた。
攻撃は一向にこないと疑問に思った直後、動けないはずの自分の体がゆっくり回転した事に驚愕するファル。
目を開くと、視線が高くやっており、その先には拳を振り下ろしたバルデスが離れた場所にいた。
顔を上げた。
その瞬間、ファルは目を開いて、何で?と訴えたくなる人物が自分を助けていた。
「うっ……」
突然、口元を左手で押さえると、ファルを下に落とし、
「オエェレロレロ…!」
ソリトは四つん這いになってキラキラと口から吐いた。
―――
あぁ〜あ、登場台無し。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます