第81話 side7 ???
意識が朦朧とする中である光景を見ながら少女は思う。その力を顕現させる領域に至っていても良い筈なのに何故その先へと堕ちることなく留まり続けるの、と。だが、そんな粗末な疑問は抱くだけで、既に答えなど分かりきっていた。
「嘘つきだ」
裏切った筈の存在にまた手を伸ばそうとしている。裏切っても抱く
手を伸ばしたくなる原因は、裏切った存在の隣に立つ少女が切り捨てた架け橋を新しく築き、その上で手を差し伸べて待っているのが切っ掛け。ただ、その少女は架け橋に足を踏み入れることも、その手を取る事はなく境界の前でただ信じて立っているのだと、少女は理解する。
「壊さないと」
そうでなければ切り捨てた最愛を完全に絶ちはしない。最愛の存在の根っ子部分は変わっていない。それで良い。
だが、まだそれは早い。一度
しかし、差し伸べる者が現れた事で中途半端な位置で踏み留まってしまった。
いや、ここまで来ればいっそのこと差し伸べる者を利用する方が良いのかもしれない。最愛は優しすぎるのだ。だから、あの策を取るしか無かった。
少女は内から湧く苦辛の感情を押さえる。その時、少女の片目から一滴の雫が滴り落ちた。
「駄目だよ。今のままじゃ……駄目……このままだ…と」
呟く少女の意識は落ちていった。
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