第41話 side3 苛立ち

 時間は少し遡る。


「くそが!」


 クレセント王国の高級宿の一つの一室の中でクロンズは苛立っていた。


 何故か。その理由は明白だった。

 少し前までパーティとして行動していた【調和の勇者】ソリトに負けたからである。

 泣きべそを掻かされ必死に助けを懇願する様は冷静になればなるほど自身の声を聞いただけで屈辱的なものと認識し反比例して苛立ちが募る。


 何故負けたのかクロンズは分からなかった。

 武技や魔法を使えるような奴ではなかった。一人では強敵と戦えず、それこそ勇者と言えるような力は無いほどに脆弱だったと認識している。目の前で見てきたからこそ断定も出来る。


 だが、決闘してみれば赤子をひねるように軽くあしらわれていった。一瞬隙が出来たと思ったらそれはフィーリスが風の弓矢で支援したから。だというのに結果はあの様だった。


 更に何らかの方法で魔法をてきた。

 そして、聖剣の力。

 最初、何だそれは?と、クロンズは頭に疑問が浮かべたが、確かに勇者として戦えるようにと国からの支援での訓練の間に聖槍について似たことを教えられた気がすると曖昧に思い出した。

ここにきてまともに訓練を受けなかったツケが回って帰ってきた。


 だが、そんな事よりも、それならば何故自分は使えない?という考えの方が強かった。奴に出来て自分に出来ないはずがないと。


 そして、何故聖女があそこまでソリトを庇い立てるのか理解できなかった事にも強く疑問を抱く。

 それはそれで、脅されている事にでもすればソリトを陥れる事が出来るはずだった。

 しかし、決闘後に聖女がソリトへ慈愛を見せる行動等によってそれは消えてしまった。


 ソリトの何処が良いのだろうか。

 弱い勇者が。


 支給した剣は強く叩き込めばすぐに折れる細工をしていた。

 何か裏があるはずだ。

 ソリトは決闘で本当に反則したのだと、結論着ける。

 それでも屈辱を受けたことは変わりない。

 あの聖女にも痛い目を見せないと気がすまない。自分の物にするかどうかはそのあとにすることにして。


 そして、その鬱憤を今は三人にぶつける事にした。特にソリトから奪ってやったファルを中心にしてだ。

 クロンズは三人にも本性を見せたことはない。

 ゆえに激しいものでも、いつもは優しいくらいなので寧ろ今日は積極的と思われるだろうと考えた。

 今日は色々出来ると思うとクロンズの顔が緩み自然と笑みが生まれる。


 どうすればソリトを陥れる事が出来る。

 クロンズは既に次にどうすれば良いかを考え始めていた。

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