第12話 一閃の流れ星

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 目的地である森の中は日射しの差し込みが少ない密森林だった。


 村人や冒険者が入っているという事もあり獣道のようなのが道が出来ており、ソリトは何とか前進している所だ。

 現在ソリトは森に入って二十分程歩いた場所にいた。奥地からはまだ遠い。

 だというのに魔物が異様に多い。可能性としては蛇の魔物から逃げてきたというのが大きい。そして、そんな魔物と遭遇してはソリトは次々と討伐していった。


『パラライズフロッグを討伐により全能力が上昇します』

『トレントを討伐により全能力が上昇します』

『トレント五体を討伐により全能力が上昇します』

『ポイズンネペントを討伐により全能力が上昇します』

『ポイズンネペント十体を討伐により全能力が上昇します』

『ポイズンビーを討伐により全能力が上昇します』

『ポイズンビー十五体を討伐により全能力が上昇します』


『Lvアップ。Lv52になりました』

『スキル【麻痺耐性】獲得』

『スキル【庭師】獲得』

『スキル【毒耐性】獲得』


【麻痺耐性】

 麻痺系スキル、攻撃に対する耐性を付与。(一段階アップ状態)

 スキル効果により【耐性】から【無効】に変化。


【庭師】

 木の枝の剪定補正効果を付与。

 土壌品質補正効果を付与。(一段階アップ状態)

 育成時、植物の成長補正効果を付与。(一段階アップ状態)

 スキルアップ効果により戦闘時、植物系魔物の特攻付与を追加。


【毒耐性】

 毒系スキル、攻撃に対する耐性を付与。(一段階アップ状態)

 スキルアップ効果により【耐性】から【無効】に変化。


 耐性系スキルが増えたのはソリトにとってとても大きかった。

【庭師】は正直いるのか疑問に思ったが、スキルアップで戦闘時効果が追加されたことで解消された。


 ちなみに魔物達は状態異常系統を持つ物が多かった。

 倒した後は、ソリトの糧として変換されていった。

 更にレベルも上がり、ステータスは多数倒さなければいけないくらいになってきた。プルトの街やカールトンの村周辺の魔物を倒しても時間の無駄かもしれない。

 準備が整ったら別の場所へ移るべきだろう、とソリトは探索しながら考えていた。


「予想ですけど、件の蛇の魔物から逃げてきた魔物が森の入り口付近に集まってきてるのだと思います」

「それしかな…って、何でいる」


 ルティアがソリトの後ろから付いてきていた。

 同じ事を考えていた為にサラッと返答しそうになったが留まり、ソリトは問う。


「討伐の手伝いをしようと思いまして」


 前回使うことの無かった治療薬や魔力薬水があり、初級だが、【孤高の勇者】のスキルで中級の回復力となっている回復魔法もある。必要な物は揃っている。

 それに、一人の方が動きやすい程にソリトのステータスはレベル52とは不釣り合いな程に成長していた。


「…………」

「もう!無視しないでください!」

「【癒しの聖女】ってことは回復魔法だけに優れてるんだろ」

「む、心外ですね。光魔法だって使えます。上級まで使えます!」


 本当に回復魔法に特化したスキルと思っていただけに意外で少々驚いたソリト。

 とはいえ、ここで引き下がる聖女様でないことは僅か数日で理解させられていた。


「はぁ……勝手にしろ」

「はい、勝手にします」


 会話はそろそろ終わらして先に進まなければならない。と、思っていた矢先、また魔物が湧いて現れた。

 さっきと同じ植物系の魔物達だが、違うのはマッシュルームのようなのキノコの魔物がいた。

 ソリトは小規模の魔物の群れに駆け出し、左手を前に出す。

 

「〝アインス・フレイムボール〟!」


 初級の火魔法の通常より一回り大きい火球を魔物達にぶつける。その後一気に距離を詰めて討伐していく。


『マシュマッシュを討伐により全能力が上昇します』


「流星閃!」


 更に、武技による光の剣閃で目の前と背後にいた魔物達を斬り倒していく。


『ポイズンマシュマッシュを討伐により全能力が上昇します』

『ブルーマシュマッシュを討伐により全能力が上昇します』

『オレンジマシュマッシュを討伐により全能力が上昇します』


 そうして、ソリトは一体一体確実に討伐していきながら進んでいく。それだけでステータスや経験値が上がっていく。


 チラリとソリトは後方のルティアを見ると、眺めるだけの状態となっていた。それもソリトが魔物を漏らすことなく難なく討伐して行くためだ。


「ちっ」


 だが、目的はあくまで蛇の魔物。

 森の奥はまだ先。このまま相手をしていてはキリがない。

 ソリトは思わず舌打ちした。


 その時だった。

 何かがソリトの隣を通り過ぎて目の前の魔物達が倒れていった。

 見れば一点だけ細い何かで突かれていた。

 それをやったと思われるルティアが少し先で白ローブをはためかせ、突きの構えでその場に立っていた。

 そのルティアの右手には全体的に細い刀身の細剣レイピアが握られている。


 新たに魔物達が攻撃を仕掛けてくる。

 ルティアが間合いギリギリの距離で魔物の攻撃を回避していく。すると、密集染みた中で魔物がバランスを崩し、その隙を逃さずにレイピアを突く。


 〝流星〟


 その言葉がソリトの頭に過った。

 単純な速度でソリトと比較すれば、ソリトの方が速いだろうが、攻撃の移り変わりから突きまでの動きのスピードモーションは凄まじく、おそらく負けていると感じてしまう程に速い。


 紫混じりの長い黒髪をなびかせ、雪結晶のようなレイピアを握りルティアの戦う姿は、まるで夜に降る雪の中で夜空に注がれる流星のようだった。

 ソリトは聖女が戦っていることに驚愕しているが、それよりもその凄絶な美しさが一瞬凌駕し目を奪われた。

 ソリトでさえ奪われたのだから、他の者が見れば一瞬奪われる所ではないだろう。


 そんな事を考えている時、一瞬静止したルティアの背後からポイズンネペントが接近していた。ソリトは一気にルティアの背後に辿り着きポイズンネペントを叩っ斬った。


「油断するな、背後にも気を配れ」

「は、はい。助けていただいて、ありがとうございます」

「勘違いするな。目の前で死なれたら後味が悪いからだ」


 ソリト達は互いに背を向けながら敵に意識を戻す。


「次はないぞ」

「ええ」

「一気に駆け抜ける」

「はい!」


 互いに体を森の奥へ続く道に向けたソリト達は、他は気にすることなく全力で駆け抜けて行った。





「せあああああ!」


 ルティアの閃光の一撃を最後に周囲から魔物は消えた。

 奥に進むに連れて少なくなっていったのだ。

 そろそろ目的の魔物が現れても可笑しくない事にソリトは警戒を強めながら件の魔物を探す。


「ソリトさんどうでした?」


 ルティアが問い掛けてきた。


「何がだ」

「何がって、私の戦闘です」

「…………」

「無視しないで答えくださいよ」


 不服そうな声でルティアがソリトに尋ねる。

 何故自分に何かを求めてくるのか本当に謎で仕方ないと思うソリト。

 だが、思うだけで聞きたいとまではいかない。

 境界線で地と地を区切られているように。


「……そうです!これで同行しても良いですよね」

「………」

「沈黙は了承と捉えて……」

「聞きたいことがある」

「あの、そこは了承を……何ですか?」


 落ち込みながらもルティアはソリトの質問に耳を傾ける。


「あれだけ近接戦が出来るのに、街では対処しようとは思わなかったのか」

「あの時は、聖女としての仕事で警戒してもらわないように宿に置いてきていたんです」

「なら魔法で、やればよかったろ」


 聖女なら光魔法は使える筈。ならば光魔法を目の前で使って眩ました隙に逃げれば良かったのだ。


「周囲に迷惑は……いえ、そうですね護身として使うべきでした。初級魔法の〝アインス・ライト〟を目の前でやれば目眩ましくらいは出来ましたね」


 今思えばといった悔やむ感情が表情に出ている。

 確かに、急に迫られれば困惑や混乱をすることはある。ルティアはそれに陥っていた可能性が大きいのだろう。


「ですので、あの時は本当に助かりました」

「偶然だ」

「それでもです。必ずご恩は返します。さっきのも含めて」

「返さなくていい」

「受け取ると言ってくれたのはソリトさんですよ」


 確かにその通りだ。

 そして、それを反故にするのは自身の言葉を裏切ることになる。

 これは絶対に断固としてしたくはないとソリトは思う。


「…はぁ…分かった」

「ありがとうございます!」


 嬉しそうにニコニコとルティアは笑顔を浮かべているが、ソリトとしてはもう勘弁してくれという状態だ。


「じゃあな」

「え〜」


 露骨に嫌な顔をするルティア。そんな彼女を無視してソリトは蛇の魔物を探して歩く。

 そして、やはりというべきかルティアが後ろから付いてくる足音が聞こえてくる。


「気にしないでください。〝勝手〟にさせていただきますので」


 ソリトの心情を読み取ってるのかの様に言ってきた。

 勝手にしろと言ったのはソリトなので何も言い返せない。

 これは諦めるしかないだろう。

 それに自衛の出来る実力はある。ソリトは気にせず進むことにした。

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