51.銃を持つ女船長
◇◇
「……これは一体、どういう事?」
フェナと共に、
"黒の騎士"達が──
町の至る所に、黒い甲冑姿の騎士が倒れていた。人数は数十人以上。
クウは馬から跳び降り、近くに倒れていた黒い騎士の一人を、近寄って見下ろす。フェナもクウの後を追って
「胸元からの出血──
「いえ、多分違うわ。武器の種類は、私には特定できない。こんな形の傷は──初めて見たわよ」
「フェナでも特定できない武器? ひょっとして……」
クウとフェナが傷の
人影の一つは、小柄で
どちらも、非常に派手な赤い衣服を着ている。
「──おや、"
「あんたが見逃してたんじゃないのかい、"オボル"。まあ、いいさ。─"
「いやあ、"
人影の一つが──
「あれは、何……?」
「まさか……! あ──フェナ!」
クウがフェナの肩を
「むっ──
小柄な生き物──オボルが驚く。そして同時に、フェナへと向けていた銃口を
「今のを
「そのようだね。とりあえず、オボル──銃は
「へっ? は、はい。分かりやした」
"
クウが立ち上がり、フェナを自分の後ろに隠す。そして"
「アンタ──いきなり
"船長"は敵意が無い事を示すように、両手を上げながらクウにゆっくりと近づいて来た。クウは剣の構えを
「あ、アンタは……!」
両者の距離がある程度まで
「あ──!」
今度はクウが驚く。真後ろのフェナも、同様の反応を見せた。
帽子の下から、"船長"の黒い──"
クウはそんな彼女の姿を見て、
「あなたは、"人間"ですよね? ──どうも初めまして。僕は、
「"クウ"。
「
「別にそんな、丁寧にならなくていいって。敬語じゃなくていいし、アタシの事はランって呼んでよ。あと、アタシも他の"人間"に直接会ったことは無いね。アンタが初めてだ。鏡に映った自分以外で黒髪の誰かを見たのは、いつ以来かな? ──とにかく、会えて光栄だ」
「こちらこそ。僕も同郷の人間に会えて──
ランの言葉を受け、クウは即座に口調を切り替えた。
「じゃあ、君の事はランさん──って呼ぶね。敬語も止める。──いやあ、でも良かった。イルトには、まだ他にも"人間"はいるんだね」
クウと──ランはどちらからともなく歩み寄り、固い握手を交わす。フェナとオボルは、無言でその様子を見ていた。
「ところで、ランさん。そこかしこに倒れてる"黒の騎士"なんだけど、もしかして彼らは、ランさんが?」
「そうだよ。アタシ達が来た時、こいつら丁度メルカンデュラを
ランが自分の腰を示す。細身の彼女に不釣り合いなほど大きな
クウがよく目を
「それより、クウ。このまま立ち話を続けるより、ひとまずそこらに倒れてる"黒の騎士"共を片付けないかい? ──その後で場を整えて、ゆっくり話をしようじゃないか」
ランがそう言って振り返り、村の方を見る。
家屋に閉じこもっていたらしい多数のドワーフの住民達が、戸口から顔を出してクウ達を見つめていた。
◆◆
"青の領域"。
まるで"ウルゼキア"の宮殿を思わせるような、
部屋の中央には巨大な四角形の
「──さあ、お三方。俺の話はこれで以上だぜ。あんたらの方は、何か話しておきてえ事はねえのかい?」
椅子に座る人物の一人、青と黒の混じったフードを
「
ソウは反応のない3人に、一度ずつ視線を向ける。3人は、ソウに
「なあ、そう思わねえか? ──"マルトシャール伯爵"」
ソウの正面にいるのは、
「あんたはどうだい? ──今日も美人だなあ、"
ソウの右側にいるのは、"ウルゼキア"で見たノーム族らしき
「お前は、今日もオドオドしてやがるな。──"
そしてソウの左側にいるのは──青みがかった肌と、魚の
ソウの発言力は、かなりのものらしい。それぞれ名前を呼ばれた3人は、ソウにどんな発言を
「──ソウ。俺からも一つ、面白い話があった」
「聞かせてくれよ。何だい、"マルトシャール伯爵"?」
小太りの男が、
「俺の"
「ケペルム……"十三魔将"の一体だな。──"赤の領域"に行ったってのは、確かなのか?」
「ああ。確かな
ソウの表情には、ほんの
「面白いのはここからだぞ。ケペルムと奴が連れて行った配下の騎士達、その
「ケペルムの身に、何か起きたとか?」
ソウに
「ああ、起きたんだろうな。"何か"が、だ。──ちなみに、
「じゅ、"十三魔将"が……。そ、そんな立て続けに二人も……? あ、ありえないですよ」
この場において唯一、まだ発言していなかった"
「──いつも派手に暴れまわってる"十三魔将"が、いきなり消息を途絶えさせるなんて、これまで無かったわね。二人共、誰かにやられたのかも。"
「俺もその可能性を考えてはいるぞ、"ニニエラ"。しかし、やはり信じ
マルトシャール伯爵がそう言った時、ソウがすっと椅子から立ち上がった。そして3人に背を向けると──黒の"輪"、"
「ど、何処に行くの……。ソウ君……」
「"赤の領域"だ、"トールコン"。──お三方、悪いが今日は解散だ。ちょっと、俺の"相棒"の
ソウはそれだけ言うと、紫色の光に
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