50.願いを叶える三つの宝石
「
ガルニオラの言葉を繰り返したクウの、表情が暗くなる。
「"輪"は力ある存在が
呪いという単語が、クウの耳に冷たく響いた。
「我の赤き"輪"、"
一部ではあるだろうが、イルトの生物は
「しかし精霊と言えど、命には限りございます。多くの者達と同じように、
「"輪"は、主の身体を離れて──意志を持って独立する事があるんですか?」
信じ
「膨大な魔力を
「それが、あの宝石の姿だった──という訳なのね?」
フェナがガルニオラに
「
「あら、そうなの。──じゃあ"精霊"さん。今のあなたはクウが
「まさにその通り。──しかし、長くこの身体を離れていた
ガルニオラは自分の腹部を見る。よく見ると赤い"輪"が出現していたが、発光はかなり弱々しかった。
「ともあれ、この感謝の意は言葉にすらなりません。クウ殿、あなたは恩人でございます。是非ともこの
ガルニオラはそう言うと、自分の胸元で丸く円を描いた。すると彼の前に──3つの赤い宝石が出現する。"輪"が
ふわりと浮かんだ宝石は、ゆっくりとクウの目の前に流れるように移動した。
「クウ殿、どうぞ。その"
「赤い宝石……。とても
クウは3つの宝石を手に取りながら、横目でフェナを見る。フェナも、興味のありそうな
「それは我のみならず、多くの"
「願いが叶う石? ──ランプの
クウは
「こういうのは……あまり、長く持っていたい物じゃないね。──まあ、とりあえず最初の願いは決まってるけどさ」
「え……クウ。まさか──もう一つ目を使うつもりなの?」
「
「あ……今の私達があの地底湖に戻っても、"
フェナは口に手を当て、はっとした表情でクウを見る。
「そういう事だよ。──さて、持ち主の
クウは目を閉じ、宝石を一つ
「僕とフェナ、キテラン王女。そしてガルニオラさんと──ロフストさんを含むドワーフの皆を、"ガガランダ王国"の入り口、火口の手前まで、全員無事に脱出させて下さい」
クウの手の中の宝石が、
目を開けたクウは、辺りを見回す。ロフストにしがみ付くキテランと、周りに
クウは消える寸前──黒焦げになったケペルムの遺体をちらりと見て、少しだけ悲しい顔をした。
火口に空いた大穴の、手前付近に当たる地面一帯。そこにクウ達は、赤い光に包まれながらじわじわと姿を現した。
「ああ──ようやく地上に戻って来れたね」
「ええ。短いようで、長い旅だったわ」
並び立つクウとフェナが、ほぼ同時にお互いの顔を見て言った。
クウは目で全員の姿を確認する。キテラン王女もガルニオラも、約20名のドワーフ達も、全員が場に
「ところで、フェナ。──あれは何だと思う?」
クウはある物を指差す。それは、車輪の付いた巨大な玉座だった。
「車輪の付いた
「ケペルムは地下の宮殿に、単身で乗り込んで来た……。"十三魔将"は"黒の騎士団"の大幹部だ。一人で行動してたとは、考えにくいよね」
「この車輪付き椅子を、ケペルムが自分で操作してここまで来たとは、とても思えないわね。──よく見たら地面には、
「フェナが言うなら、きっと間違いないね。でも、それなら──配下の騎士は今、
クウの言葉で、フェナが地面に
「人数は、恐らく50から60といった所かしら。車輪の
「まさか──! でも、何の目的で?」
「破壊されて、住民が力を合わせて復興させようとしてる
「もしそうなら、絶対に見過ごせない。──今すぐ戻ろう」
「ええ。でも、ちょっと待って。"あの子"を呼びましょう」
フェナはそう言うと、自分の指を口に
「よしよし。──いい子ね」
フェナは馬の顔を優しく
「──ほら、クウ。いらっしゃい」
「あ、うん。……この
クウが、フェナの手を借りて彼女の後ろに着席した。フェナはクウが自分の腰をしっかり
キテランやドワーフ達、ガルニオラの視線に見送られながら、クウとフェナを乗せた馬は、メルカンデュラへと速足で駆けて行った。
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