44.宝石の異空間からの脱出
◇◇
「──っわあ! ──くっ、また!?」
謎の空間から、突如として落下したクウの大声が響く。
瞬間移動したらしいクウの身体は──山のように積まれた金貨の上に勢いよく落ち、
「──ぶはっ。ああ、びっくりした。──何だよ、ここ……?」
やや不快感を
一見すると、ドワーフ達と合流した宮殿の広場とよく似た空間である。しかし、よく見ると多少の差異が見受けられた。
四方が、完全な暗闇なのである。地面には山積みになった金貨や金色の調度品、宝石類が隙間なく
続いてクウは頭上を見る。真上には、丸い穴のようなものが一つだけ空いていた。クウの感覚では、まるで
「ここは一体、
「──その通りじゃ。お主、中々の
クウは飛び上がって驚き、真後ろを見る。何者かが、腰に手を当てた
「夜色の髪の毛……。緑色のエルフの
何者かがクウに歩み寄り、その全身を闇の中から
真っ赤な長髪を
知らない顔ではあるが、肌と目の色から、クウには明らかに彼女がドワーフ族の女性である事だけは分かった。
「だ、誰……?」
「何じゃ。何を驚く事がある。──ああ、そうじゃった。先程の
「えっ、まさか君は……あの"
「そうじゃ。いやあ、助かったわい。あの
「"また"……? ここに、前も来た事があるの?」
「あるとも。父上が──王が
「予想はしてたけど、やっぱり君の正体は──」
「ああ、自己紹介がまだじゃったのう、"人間"殿よ。
ドワーフの少女──キテラン王女は、
「態度を改めましょう。先程までの至らぬ
「むう、
「そうですか? それじゃあ──お言葉に甘えようかな」
クウは不安定な金貨の山の上に、ずっと立っているのが疲れたらしい。近くにあった宝箱の
「薄々感じてるとは思うけど──キテラン王女。あなたをドワーフの皆さんと一緒に助けに来たんだ。中でもロフストさんは、特にあなたの身を心配してたよ」
「やはり、そうであったか。あやつら、ここまで来るのは楽では無かったじゃろうにのう……」
「"
「うむ、今すぐ出たいものじゃ。──出られるものなら、のう」
「えっ? ……どういう意味?」
キテランはクウを
「説明が必要じゃな。この場所は、あの"
「謎解き? ……ちなみに、間違えたらどうなるの?」
「意地の悪い
キテランの目がうるうるし、涙を
「キテラン王女、その謎っていうのは
「何処にでもあるのじゃ。──待て、この言葉そのものが謎かけではないぞ。そうじゃな、
キテランは可愛らしい所作で、地面に転がっていた金製の宝を指差す。クウは
それは金製のゴブレットだった。大きさに反して結構な重さがある。金の
「それをよく見よ。文字が刻まれておるじゃろ?」
クウが目を細めて、ゴブレットの側面を見る。キテランの言葉通り、
~
~
~この身、
~
「面白い"
「何じゃと?」
キテランは目を見開き、クウの顔を下から
「お主、もしや今……分かったと言うたか? 冗談は
「この問題、分かりやすいよ。文章をそのままの意味で受け取ればいいだけだからね。──病室で読んだ本の中に、面白い中世ファンタジー作品があったんだ。その中の場面の一つに、これと似たような謎解きがあったんだよね。──いや、ごめん。伝わらないよね」
「伝わらぬ。何を言っておるか分からんわ。──それより、クウ。
「分かってるよ。──
「ええい、何を
「短気だなあ。──
クウはそう言うと、座っていた宝箱から降りた。そして宝箱の
「適当な場所でも、きっと探せば見つかる。この"輪"の存在は、僕達に外へ出て欲しいはずだから。そうじゃなきゃ──問題文の3行目と4行目は、必要ないからさ。おっ──」
クウは目的の物を見つけたらしい。手に持ったそれを、キテランにも見せた。
それは小さな──"
「多分、これを使えばいいと思う。──さて、キテラン王女。こうして見るとあなたは、とても奇麗な……赤い髪をしてるよね」
「そ、そうか……? お主の夜色の髪も中々のものじゃぞ。この場では、背後の景色と同化して見えづらいがの」
「じゃあ、すぐにここを出よう。──王女様、失礼します」
「む、何じゃ……? きゃっ!」
クウは突然、キテランの身体を
キテランの長髪の中で、"
「さあ、これでどうかな?」
クウとキテランの身体が、じわじわと赤い光に
「──成功だ」
二人の身体が完全に消え、"
クウの持っていた"
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