第4話 高校時代②

 二年後の高校三年の春。Aは、学校の頂点にたった。具体的にとは何か説明しなければならない。


 人間はくだらないものだと知った彼は、心理学を学んだ。そして、筋トレに励んだ。単純だが、彼は人心掌握の術を身につけ、それでも言うことを聞かないものは力で押さえつけた。

  成績は常に上位、高校生離れした能力と仏のような優しさに周りの生徒は劣等感を抱いただろう。


 周りの凡人には興味なかったAだったが、石川とだけは仲が良かった。石川は普通の高校生だったが、「純粋さ」という点では信頼できる男だった。

 しかし、Aと石川の人生はお互い違う方向に向かい始める。Aは、先生にも巧みな仮面を被り、優秀な生徒として過ごしていた。そんな彼は、人生に退屈だった。せっかく学んだ心理学も使う機会がなかったのだ。


 ある日、Aは同じクラスの女生徒に声をかけられる。

「今度さ、他校の子達と合コンみたいなのやるんだけどさ…来ない?なんか、メンツがみんな頭いい感じでさ」

その女生徒の後ろにいた同級生は、「やっぱやめた方が…」「なんで急に」とヒソヒソ話していた。

 話したことのない女生徒の誘いと本気にしていない態度に不満を感じたが、退屈だった日常を変えるイベントに不思議と興味をもった。彼は石川も連れていく、という条件で了承した。


 その夜、女子三人と男子三人で高校生にしては気取ったイタリアンを食べた。それなりに盛り上がってから、カラオケに行きそのまま解散の流れになった。彼は石川と駅のホームに向かっていたところ、一人の女性が声をかけた。

 彼女の名前は涼子。Aとは違う高校で、食事の時はAに好印象を抱いていた。連絡先を交換し、何度か食事やデートを重ねた二人は付き合った。


歯車が狂い始めたのはこの時からである。

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