第3話 告白

 恋愛には晩熟おくてなほうだ。これまで好意を寄せた男子がいないわけではなかったが、告白したことはないし、もちろん告白されたこともない。試合が終わったその日から、私の中での鈴木先輩の存在は、日増しに大きくなっていった。あの交流試合から一週間後、私は練習終了後の鈴木先輩を偶然見かけて、勇気を振り絞って話しかけた。

「鈴木先輩。私、一学年下の佐々木麗子と言います。マネージャーの真理子、いえ山田さんの友人です。この前の交流試合、感動しました」

「見てくれてたんだ。応援ありがとう。何とかチームが勝てたから、面目めんもくが保てたよ」と鈴木先輩が照れながら言った。

「あの試合を見て、バスケットボールが好きになりました」

「そう言ってくれると、バスケット選手としては嬉しいよ」

「へ、変な・・・ことをお聞きしますが、先輩には今お付き合いしている人がいますか?」さらに勇気を振り絞って聞いた。

「バスケの練習で忙しくて、今はいないけど・・・」

「まずは友達として付き合って下さい」と言った後に、自分でも驚いてすぐに後悔した。

「んー。気持ちは本当に嬉しいけど、御免なさい。今は県大会に向けた厳しい練習で、それどころじゃないんだ」

「わ、私の方こそ、いきなり変なことを言って御免ごめんなさい」

 私は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、その場から走って逃げ出した。

「ちょっと待って」

 鈴木先輩が私に何か声をかけたみたいだったが、真っ赤に充血した私の耳には、その声は届かなかった。

 あれから私は、あの時なぜ鈴木先輩に告白してしまったのか、ずっと後悔していた。「私みたいなポッチャリが、鈴木先輩と釣り合うわけないのに・・・」。その後、私が鈴木先輩と会う機会はなかったが、家族と出かけたショッピングモールで、若い女性と腕を組んで楽しそうに歩いている鈴木先輩を偶然見かけた。相手の女性は、ポッチャリ系の私とは反対のスレンダーなモデル体型で、笑顔が良く似合う美人だった。

「やっぱり、鈴木先輩は細身の美人が好きなんだ」と思いながら、私は気付かれないように、その場所からゆっくりと遠ざかった。

「人は見た目が・・・」と、ルッキズムという言葉が頭の中をめぐった。


 

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