第2話 新・北風と太陽

 前回、旅人の外套コートを脱がす勝負で勝利して味をしめた太陽は、再び北風と勝負しました。今度は太陽が服を脱がす人を探しました。太陽は、南の海で筏に乗って漂流している人を見つけました。

「今度は、あの人が着ている長そでシャツを脱がしたほうが勝ちにしよう」と太陽が提案しました。暑い場所なら前の時よりもっと簡単に服を脱ぐだろうと、太陽が考えたからです。

「それで結構。まずは太陽さんから始めて」と北風が言いました。

 太陽は、長そでシャツを脱がそうと、ギラギラと輝きを増しましたが、「紫外線がきついなぁ。このままじゃ、ひどい日焼けを起こしてしまう」と言って、漂流者はなかなか長そでシャツを脱ぎませんでした。それから、「暑いなぁ。のどが渇いて死にそうだ」と漂流者は言いました。太陽はそれからしばらく漂流者を照らし続けましたが、結局、長そでシャツを脱がすことができませんでした。

「今度は僕の番ですね」と北風が言って、ヒンヤリとした風を漂流者に送りました。漂流者は薄曇りの中の心地よい風で、体と心が少しいやされました。漂流者は、湿り気を含んだ北風に触れて、のどの渇きも心なしか解消された気になりました。

「リラックスしたら、良い考えが浮かんだぞ。このシャツを帆の代わりにして筏を動かそう」と言って漂流者は長そでシャツを脱ぎ始めました。

「今度は僕の勝ちのようだね」と北風が言いました。太陽は大層悔しがりましたが、無理やりシャツを脱がすことはできませんでした。北風は、漂流者が近くの島に辿り着くまで、心地良い風を送り続けました。

 人生は思い通りにはいきません。この話は、柳の下に二匹目の泥鰌どじょうはいないことを教えています。

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