デジャブ寓話集

水樹詠愁

第1話 新・ウサギと亀

 森一番の健脚けんきゃくを自負するうさぎは、いつものように自分の足が如何に早いかを森の動物たちに自慢していました。このとき、いつもは大人しい亀が、果敢に兎に挑戦しました。

「兎さん、僕と競争してください」

「亀さん、承知しました。でも君では僕には勝てないと思うなぁ」と兎が言いました。

「何事も、やってみないとわかりませんよ」と亀が反論しました。

 熊が審判となって、山頂までの競争になりました。大方の予想通り、兎の圧勝で競争はあっという間に終わってしまいました。

 勝負に敗れた亀はリベンジを誓い、兎にこう言いました。

「兎さん、また来年も競争してくれるかい」

「もちろんさ」と兎が応えます。

 一年間、毎日欠かさずトレーニングを積んだ亀が、翌年再び兎に挑戦しました。しかし、またしても兎の圧勝に終わりました。亀はりずにその翌年も兎に挑戦しました。

 亀が兎に挑戦し続けて10年目、ヨボヨボに年を取った兎に、亀がついに勝利しました。翌年、兎は天寿を全うして天にされました。

 この話は、最終的に勝つのは長生きした方だ、ということを教えています。

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