第41話 三好妹が私の震えに気が付き
三好妹が私の震えに気が付き、踊りを止めて、私の元に飛び込んでくる。
「アンナ! どないしたん?」
三好妹に抱きつかれた瞬間、私の脳裏に懐かしい顔が思い浮かぶ。
そして、三好真理の今まで認識できなかった顔が、シンディの顔と重なるのです。髪の色も、きっと、目鼻立ちだって違っている筈なのに……。
「ああっ、シンディ……。あの時、一人にしてごめんなさい」
「アンナ、うちこそ、なんの力にもなれずごめんなさい」
私と三好真理は、抱き合って泣いていた。
二人の様子をあっけにとられていたみんなであったが、山本先生が我を取戻し、口を開いたのです。
「あの、美晴さん、それに三好さん。貴方たち、前から知り合いだったの?」
私は、その質問に、やっと今の自分の立場を思い出した。
「いえ、知り合いと言うか、この間、会ったのが初めてです」
真理も、私の言葉に大きく肯いている。どうやら、真理も今の自分の立場を思い出したようだ。
「じゃあ、今、抱き合って泣いているのって、なんで?」
「シンディ、いや、三好さんが、一旦断ったのに、すごくダンスを練習していたのに感動して、ちょっと、昔、一緒にダンスを習っていたお友達と重なっちゃって……」
「うちも、なんかアンナにダンスを認められたのが嬉しくって」
そうやって、言葉を濁す。その言葉を聞いて、横でダンスを見ていた田中君がなぜか、ニヤニヤしている。
「まさか、ここで、攻略対象に妹ルートが発生するとは思わなかった。
今の二人の返事の曖昧さと不十分さを僕が補ってあげれば、僕への好感度があがって、ハーレムルートが発生するはず……。
1. 二人は、前世、知り合いだった。その記憶を今、ダンスをきっかけに取り戻したんだね。
2. 二人は、ユリだった。お互いそのことを、ダンス表現の中にあるメッセージで知ったんだね。
3. 二人は、共通の趣味を持っていた。それは腐女子だということだ。そのことを、ダンスの表現の中にあるメッセージで知ったんだね。
さて1は絶対ありえないよな。なら2か3か。しかし、これは、二人の性癖にかかわることだ。他人に知られたくない性癖は、当たったとしても、外れたとしても、俺が引かれるのは、目に見えている。なら、選択肢は1だ」
一瞬鋭いと思った田中君の思考は、残念ながら、ゲームの設定から外れることは無かった。
それどころか、妹ルート? そんなフラグは、私がへし折って差し上げましょう。もっとも、選択肢が駄々洩れだから、フラグを折るまでもないんですけど。
そう考えて、口を開こうとすると、大笑いが正面から聞こえてきた。
「田中、それは無いな。いやーぁ、今まで何事にも冷めていた真理が、あまりに真剣に、ダンスの練習をすると思ったら、一度断られた美晴さんに、ライバルとして認めて欲しかったんだ。わかるぞ、お互い実力を認め合った後、友情が花咲くんだよな~~」
ナイスフォロー、さすが、三好君です。
ただ発想は、恋愛シュミゲーの田中君と、どっこいどっこいだ。こいつは、格ゲーマニアと見た。しかし、三好君はイケメン、学校中の人気者が持つという場の補正スキルを持っている。このスキルは場の空気を整え、誰もが三好君の意見を肯定するという、イケメン絶対領域を展開できるのだ。
あーっ、うらやましい。
このイケメン絶対領域のおかげで、私と真理の友情がみんなの中で確定事項になってしまった。
「ほらほら、これで、三好兄妹がダンス部に入ってもなんの問題も無いわね」
先生、それは違います。私は三好君たちに対して、別に、何の感情もいだいてなかったのです。ただ、三好君ファンの人たちの暴走が怖いだけで……。
でも、真理がシンディとわかったので、もう、離れ離れになる気なんてサラサラない。
でも、その前に確認しておくことが……。
「二人とも、手のひらを見せて」
「「うん?」」
なんだろうという感じで、掌を私の方に向ける三好兄弟。
三好雄二の手相は以前盗み見たことがある。頭脳線がスパッと切れて運動神経は折り紙付き、人差し指の付け根にあるソロモンの輪は天才肌で信者を増やし、カリスマと呼ばれる手相を持っている。
シンディもとい真理の手相も、くっきりした太陽線、多種多様な能力もあり、人を魅了する力もある。でも長く伸びた感情線は、人差し指の根元で二股に分かれている。確かこの感情線の意味は……。同性愛に走りやすいだったはず? 過去に異性に裏切られたトラウマを持つ人に多い手相だったはずだ。 確かに前世で娼婦の娘ということで継母に虐められ、その美豪に目を付けた公爵が、無理やり、養子にしたはずだ。しかも、変態と名高い伯爵家に嫁がされそうになったところを、私が助けたのが最初の出会いでしたが……。
っていうか、マリアを伯爵に宛がおうとしたところで、ケルン王子たちが伯爵の人身売買を暴いて伯爵は処刑されたんで、シンディは難を逃れたが本当のところなんですけど……。
それから、シンディは私に感謝して、嫌われ者の私と友達になってくれましたけど……。そこは深く考えないでおきましょう。
そして、二人とも掌の中央に神秘スターがある。しかも神秘スターのある手は私と同じ左手である。左手は先天的な運勢、長田君、穂奈美、田中君は後天的な運勢を表す右手にある。
三好君も、真理と同じように前世から私と繋がりがあるということなのかしら? いずれにしても、ダンス部の創部に係わる6星剣のメンバーと考えてよさそうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます