第34話 放課後、私の予想通り高橋さんが
放課後、私の予想通り高橋さんが長田君に近づいてきました。私は長田君に目配せをして、席を立った。
「長田君先に、行っているからね」
そう言って、私は後ろ姿に憐みの視線を感じながら教室を出たのです。
「待ち人、来たらず。恋の横恋慕に破れた哀れな女」まあ、そんな感じの視線ですかね。
あら、私、人の視線が読めないはずなのに、ちょっと被害妄想に囚われすぎかしら?
しかし、クラス中の女の子の視線の集まる中、高橋さんに話しかけられた長田君は、上手く会話にならないようにスル―してくれるはず?
――長田君サイド――
ゴールデンウィーク明け、学校に出て来くると、美晴さんに、東京のお土産と言われて、背筋強制ベルトを渡された。これを毎日付けて学校に来るようにと言われて……。
それから、毎日、背筋強制ベルトを付けているのだが、少し、視線が高くなったようで、たった数センチの違いで、これだけ世界が違って見えるのは驚きだった。
背も少し高くなって、かっこよくなったみたいだ?
そんなことを考えながら、数日を過ごしていると、ある日、授業中に美晴さんから手紙を受け取った。最近は放課後、ダンス部の部室で一緒に居ることが多いから、めったになかったんだけど……。なにか緊急のことでも有ったのかな?
すぐに手紙を開けると、高橋さんに話しかけられるから、そこで話しをせず、部室に連れてくるようにということだった。
僕に、高橋さんが話し掛けてくる? なんで?
背が高くなって、モテ期が来た? まあ、そんなことはありえないだろう。僕はそこまで能天気にできていない。そうであれば、過去の僕はあそこまで捻くれていないはずだ。
僕にはさっぱり訳が分からないのだが、美晴さんには何か考えがあるようだ。
そういえば、手紙が来る前の休み時間に、珍しく庄田君になにか話し掛けていた。それが原因なのか?
美晴さんが絡んでいるなら、僕が高橋さんとここで話すのは、不味いということだろう。
しかし、その方法は手紙には書かれていない。僕に無い知恵を絞れという事か? それは無理だろう。大体、僕は女子から話し掛けられたことがない。全然、経験値不足なんだ。
いや待て、こちらから話し掛けた時はどうだった……。そこにヒントがあるはずだ!
放課後、スグに美晴さんが席を立って教室を出ていく。クラスの女子の視線は、「面白い物が見られなくて残念」と言う顔をしている。
僕がそういった視線を読み取っている時、高橋さんに声を掛けられた。
「長田君、ちょっとお話があるの?」
高橋さん、本当に話し掛けてきた。
「今、ここで? 僕、忙しいんだけど……。別の日じゃダメかな?」
まず、僕のされた仕打ちその1で対応する。「忙しい、別の日で」僕には何も言わせない。そして、別の日は永遠に来ない。僕が別の日に近づこうとすると、周りの女の子がブロックしながら、そそくさと僕の前からいなくなる。
別の日作戦は、永遠に言わせるタイミングを作らせないのだ?
しかし、高橋さんは、そこで引き下がってくれなかった。
「どうしても、今日、話したいの!」
「ここじゃーなんだから、人のいないところで」
本当は、この後、「一緒に居るところを、人に見られるのは嫌だから」と言う言葉が続くんだが……。そして、大抵、僕はここで心を折られてしまう。
しかし、高橋さんは、
「みんなに見てもらいながらでないと、意味がないのよ!」
ちょっと、涙目で怒っている。
ああっ、これは僕に告白する罰ゲームだ。だったら、告白させちゃあだめだ!
「実は、僕からも話があるんだ! 僕は、前から高橋さんの事が好きだったんだ!」
驚いた顔をする高橋さん。
「でも、返事を聞くのは、こんな大勢の前じゃ恥ずかしいから、一緒に付いて来て!」
僕は、高橋さんの手を引いて、一直線に教室を出て部室に向かう。
あっけにとられたクラスの女子たちが、慌てて僕たちの後を追うが、女子の囲みを突破するんだけど、数人の女子が後を追っかけて来るようだった。
そうして、2年1組の前までくると、そこに、偶然、三好君が教室から出て来たんだ。
「三好君、後ろからくる女子を止めてくれ」
僕は、すれ違いざま三好君のそういうと、ダンス部の部室に高橋さんと飛び込んだ。
三好君は、ある程度ダンス部の事情を知っていた。きっと高橋さんがダンス部に入ることを周りの女子が邪魔していると勘違いしてくれるはずだ。
僕が部室に入る寸前、ちらっと後ろを見ると、三好君は「なに、君たちどうしたの?そんなに慌てて!」と女子たちに話しかけ、見事に女子たちを引き留めていた。
出た! 「必殺、イケメン、金縛りパス!」
イケメンから、思いがけないパスを出された場合、受け取るのが精一杯で、その後、攻撃に転じることができずに金縛りになるのだ!
――個人の感想です――
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