第29話 ――三好真理サイド――
――三好真理サイド――
三好雄二の妹、三好真理。うちの前世は、アメリーナ王国の6星剣と呼ばれるエルデ侯爵家の一人娘、シンディでした。先ほど引き込まれるほどの甘美な衝撃を受けて、すべてを思い出すことができたのです。
美晴さんの踊りを見て、うちはなんのために、この世界に生まれてきたのか確信が持てました。それほど強烈に、うちの魂の深層にその美晴さんのダンスが抉(えぐ)り込んできたのです。
うちが生まれてきた意味、それは親友だったアンナを今度こそ幸せに導く。それこそが、うちの生きがいであり、使命であり矜持だったのです。
前世、うちが生まれ育ったアメリーナ王国の西部にあるナンバ領、そこで知り合ったアンナがまだ嫉妬に狂っていなかった時代、二人で将来を語り合った。
アンナはケルン王子を支えて王国をさらに発展させるという。私は6星剣の剣として他国からアメリーナ王国を守る。そんな未来を話しだったのに……。
学園に行った途端、ケルン王子は平民のマリアに首ったけ、6星剣の家柄の宰相の息子ルーベン、騎士団長の息子アーサー、王国研究所所長の息子ルークもみんなマリアに絆されて、アンナの味方はうちだけになった。そんなアンナをうちは必至で抑えたけど、とうとうアンナはマリアを階段から突き落として……。
ついに、ケルンに婚約破棄を言い渡される。それだけじゃなく、アンナの父親、ガルシア侯爵も罪を着せられて、一家は全員、打ち首となった。そして、広大なガルシア領はマリアの出どこのシャロン男爵家が治めるようになった。
しかし、シャロン男爵家は隣国のローマニア帝国と繋がっていて……。
そのことに気付いた私は、単身、マリアに抗議したけど、それを虐めと取られて親に幽閉された。しかし、父のエルデ侯爵もガルシア侯爵と同じように、罪を着せられ一家打ち首の刑に処せられることになった。領地はシャロン男爵の息のかかった新興貴族が治めることになった。
その時、お父さまが私だけを幽閉した塔から逃がしてくれて……。
6星剣がバラバラになった後は、ケルンたちが現国王相手にクデーターを起こし、その内乱に乗じて、ローマニア帝国がアメリーナ王国に攻め込んできて、あっという間にアメリーナ王国は滅んでしまった。
うちはアメリーナ王国内で内乱の隙に乗じて、アンナの敵(マリア)を討とうとして失敗したけど、身を寄せたレジスタンスの組織で学んだ暗殺術と諜報術を身に着け、再びマリアにあと一歩まで迫ったんだけど、マリアは最初からローマニア帝国に裏切られる運命にあったみたいだ。
うちはマリアを監視していたローマニア帝国の屈強な兵士たちに、マリア殺しの汚名を着せられ、マリアと同じく殺されてしまった。
そんなうちが見たアンナは、この世界に生まれ変わって元気そうに踊っている。
生まれ変わっても、アンナと同じ世界で生きることが出来る。アンナが前世を覚えているかどうかは分からないけど、無念だった前世を少しでもこの世界で取り戻したい。
そう望んで、美晴さんのダンス同好会に入部しようとしたのに、即決で入部拒否!
なんで? うちのことがわからないの? 杏奈の隣にいる長田とかいう人より、うちの方が役に立つのに!
なんかこの地方の訛(なま)った話し方だと、覚醒してからは話しにくいのよね。うちはナンバ領の出身やし。
それから、色々と杏奈さんの周りを、探偵〇イトスクープを使って調べてみると、原因はすぐに分かったんや。
(探偵ナイトスクープって! そんな、あほな!)と誰かつっこんでーな!
杏奈さんは東京から引っ越してきたばかりで、友達もおらん。都会から来たゆう美少女ゆうだけで、いじめられているんや。
そのいじめの中心の3人、うちが暗殺したってもええねんけど、この平和な国で、殺人はないわな。それに、うちのにーちゃんもそれに絡んでいるらしい。
にーちゃん、顔だけはええからな。杏奈さんと仲ようなったら、嫉妬でいじめがますますひどうなる。ははーん。分かったわ。杏奈さんは嫉妬の弾よけに、あの長田ちゅうんを使っとんねんな。
でも、盾は盾。しょせん一方向からの攻撃にしか耐えられん。杏奈さん、職員会議で演説ぶっこいたらしいけど、ダンス同好会の創部に、役に立たん盾絡みで、とんでもない条件を飲まされとるらしい。
この件を預かった顧問の先生が、中間テストまで待ってくれたら、悪いようにはせえへん、ゆうとったから、うちもそれまでは大人しゅうしてんねん。
どうやら、うちらの利害は一致したみたいやねん。
それで、それまでは、にーちゃんに、いらんことせんと大人しゅうしとけってゆうたんや。
にーちゃん、変に正義漢が強いから、いじめられてるのを知ったら、助けようとするに違いないねん。まあ、目立たんように出来んタイプやから、みんなの反感かって、杏奈さんも困るやろうから、「あんじょうしといてや!」ゆうたら、にーちゃん、「真理、お前、言葉遣いがおかしいぞ、何時から関西弁になったんだ?」って言われたんや。
関西弁? これは前世のナンバなまりやんけ!
そんな話をして日々を過ごしていたら、にーちゃんが、杏奈さんのプロモーションビデオを手に入れて帰ってきたんや。
どうやら、うちのために買(こ)うてきたらしい。さすが杏奈さんや。そのダンスは圧巻やった。しかし、うちはすぐにそのダンスが、宮廷舞踊をアレンジしていることに気が付いた。
杏奈さんの前世の記憶が戻っているのかどうかは、うちには分からんけれど、これで、うちが踊れへんかったら、確実にダンス同好会に入部した後、杏奈さんの足を引っ張ることになるやん。
それだけは、絶対に避けなあかんからなー。
私の名前は真理(まり)。しかし、真名(しんめい)は真理(しんり)。ハッピーエンドもバッドエンドも必要あらへん。トゥルーエンドを目指す者やで!
そう言う訳で、うちはにーちゃん相手に、ダンスの練習をはじめたんや。
「ところで、にーちゃん、なんで社交ダンスがまともに踊れるんや?」
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