第14話 私を除く有志を四人

 さて、私を除く有志を四人見つけることが大変そうです。やる気とか人柄とかが顔から伺えない失顔症の私には荷が重い。と言うか、ダンス以前の大きな障害です。何か、表情とか面構えとかから判断しなくても、そういったことが分かる方法がないかしら? 

 長田君に何かないか聞いてみようかしら?

 私は、そこまで考えて、デザートのプリンにスプーンを突き刺した。

 うーん。美味しい。頭を使った後は、しっかり、糖分で栄養補給をしないとね。

 五時限目に、私は長田君にまたメモを回しました。

「顔以外で、その人の考えていることや性格が分かる方法ってないかしら?」


 ――長田君サイド――


 五時限目に、また、美晴さんからメモが回ってきた。中身は「顔以外で、その人の考えていることや性格が分かる方法ってないかしら」だった。さっきの「恨みを晴らしてあげます」と何か関係があるのだろうか?

 それより、恋愛相関図の僕の所は華麗にスルーされていたし、僕って美晴さんにとって都合のいい情報提供者? 

 まあ、見返りを期待するほど楽天的ではありません。過去の僕は、恋愛駆け引きで連戦連敗、自分を御すことに関しては免許皆伝の恋愛指南役なのです。

 まあ、ここは何も期待せず、無難に返事を返しておきましょう。「人相以外なら手相とかはどう?」 と返事を返すと、美晴さんは、呆気に取られた顔をしたかと思うと、ニヤニヤしながら自分の手をじっくりと見だしました。

 さらに、五時限目が終わった後、美晴さんが声を掛けて来た。

「長田君って、部活に入ってる? えっ、入ってないの。だったら、今度お願いすることもあるかもね。その時はよろしくね」だって。

 さっきの回答がよっぽど気に入ったのかな。これは、放課後デートのお誘いなのか? そこまで行かなくても、放課後、何かお願いすることがあるということだろう。僕は美晴さんのお願いなら、どんなお願いも聞いて上げる覚悟がある。

「いいよ。何時でも時間を空けるから」

 僕は、美晴さんに返事を返した。


 ******************


 さて、私は長田君から返って来た返事を見て、なるほどと唸った。

 バカじゃないようね。とりあえず、ダンス部員として長田君には声を掛けておきましょうか。

 五時限目が終わった所で、長田君に声を掛けます。ただし、私たちの会話は周りの女子たちに聞かれています。まだ計画中の段階で邪魔されると面倒なことになります。

 私は、目的が分からないようにオブラートに包んで、長田君にお願いします。

「長田君って何か部活をやっているの?」

「いや……」

「長田君って、部活に入っていないんだ。だったら、今度お願いすることもあるかもね。その時はよろしくね」

 その返事が、「いいよ。何時でも時間を空けるから」

 うん、なんか返事がおかしい。時間を空ける? 一回こっきりじゃあないのよ。別に、放課後付き合ってもらいたい用事なんてないんだけど……。まあ、いいや。言質(げんち)は取りました。同好会を立ち上げた暁には、放課後びっちり付き合ってもらうから。

 私はにっこりして、笑顔を長田君に返しました。


 私は、その後の授業を無難にこなし、放課後は図書館に行って手相の本を借りてきます。

なんの本を探しているかというと、手相の本です。

「手相占い」に「サルでも分かる手相の本」なんかありきたりの題名です。そこで手に取ったのが「悪魔の予言書(手相占い)」です。この作者、テレビで毒舌なので有名なのよね。

 思わず手に取ってパラパラとページをめくると、「下げチン手相」に「下げマン手相」、「ニート相」に「ストーカ―手相」そして「ひも手相」、最後は「異常性癖手相」。

こんな相手とは関わり合いになるなと、上から目線の貶(けな)しっぷりです。

 そうそう、自分の手相が知りたいわけじゃじゃない。私は相手の手相が知りたいのです。他の本に比べてバッサリ手相を切っています。もし、自分の手相を知ろうとしてこの本を手に取って、自分の手相がここまで貶されていたら……。この本、買う人がいるのかしら?

 さらにこの本予言書って書いているだけあって、あの「当たらずも八卦」の易の占い方まで書いてあるのです。かなりいい加減ですが……。

 でも、私にとっては好都合なのです。早速、借りて帰ることにします。

 

 そして、家に帰ると早速、手相の本を読み始めます。

 まずは私の手相を見てみます。生命線も頭脳線も感情線も十分長くはっきり線も出ています。頭脳線が小指の下の掌の膨らみ(月丘)まで流れ込んでいるから、「仕事も出来て性格もいい」天は二物を与えずが嘘と分かる相ですって。

ちゃんと才能を示す薬指の根元から太陽線がしっかり出ているし。ただ、運命線を横切る横じわが多いいのよね。障害が立ちふさがる苦労相ってわけなのよ

 でも手相は、努力次第で変わるって書いてあるし……。私はあえて、頭脳線が長いのは恋愛においては、妄想一直線の頭の中はお花畑と言うところは無視をする。だって、素人なんだもの。月丘に流れ込むと長いの違いがよくわからないの?

 あれ、手の中央のくぼみに短い線が三本交差しています。スターって言うらしいんだけど、ここに神秘十字があったら、不思議なことを体験するスピリチャル相らしいんです。

ここがスターになっていることは、より不思議なことに縁があるってことかしら? 大体、わたし転生者だしね。だったらこの手相を神秘星型相と名付けましょう。

私は本の気になるところに付箋を付けると、今度は中学生の競技社交ダンスについて色々とネットで調べてみます。実際、中学生の全国大会なんてあるのかしら?

 ネットを調べてみると、無いことは無いけど、部活っていうより競技団体に所属して、その団体の大会に出る感じですね。このド田舎には団体に所属しているダンス教室が無いんですから、これはアウトですね。

 まったく、指導要綱でダンスが必修になっているのに、ダンスの頂点に立つ社交ダンスの大会が中体連主催で無いってどういう事なの?

 でも、別に中学校ダンス部選手権って言うのが在って、これは学校単位の部活として、顧問が引率することが必須条件ですか……。

これなら公募でエントリーすることができますね。でも、これって、ストリートダンスが主ですよね。集団舞踊だし。

 どんな感じのダンスかと動画を確認してみると、まあこの程度なら、社交ダンスをアレンジすれば、集団舞踊に見えますよね。曲の途中で相手が代わったり、ソロで踊るパートの部分を集団でユニゾンで踊るとか。募集意義に幅広いジャンルと個性的なダンスを求めているって書いてあるし。

それに発足理由が中学生の「情熱・努力・友情・チームワーク」を応援するためって、これに勝利があれば、何かの雑誌のテーマみたいです。うーん、バトル要素が必要なら、護身術で習った剣術の動きも取り入れればいいのよ。

 社交ダンスの優雅さと、武術のキレのある動き、もう優勝は私が貰ったみたいなもんよね。

 すっかり、その気になった私はダンスのイメージトレーニングをしながら眠りに就きました。もっとも、そのイメージトレーニングは、ボッチダンスのステップを踏む情けないイメージでした。

――私はカルメンじゃないって言うのよ!



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る