第11話 私は杏奈の時から、ライトノベルの中で
私は杏奈の時から、ライトノベルの中で、悪役令嬢に転生するジャンルが好きだったのよね。ざーまっが好きだったんだけど、こればっかりは、自分が悪役令嬢で首を刎ねられたとなるとね……。今とは逆にマンガの知識がある杏奈がアンナに転生してくれていたら物語どおりでよかったんだけど……。
それで、ネット小説とか、実際に買った書籍とか、もう一度読み返しているんですけど、杏奈の記憶では、現代知識とか乙女ゲームの予備知識を持って、乙女ゲームの世界に転生しているのよね。私みたいな逆パターンの話って、本当に見当たらないのよね。
それに、私の場合はゲームのように攻略相手もいないし、貴族時代の知識がこの現代に役に立つことなんてなさそうだし、扇子は封印されちゃったしね。
それでも、どこかにヒントは無いかって、休み時間に持っていた書籍をもう一回読み返そうと学校に持ってきたのに、これではうるさくて読書もできません。
私は自分探しの旅で忙しいんですから。
私は周りに群がっている女子をしり目に、ゴシック三国の彼氏である庄田君の事をちらっと見て、言ってみました。
「庄田君って、かっこいいよね」
ぼそりと、しかし誰の耳にも聞こえるように……。
あれ、隣の席の長田君が席から崩れ落ちています。ちょっと、ちゃんと座っててよ。私の背後の防波堤なんだから。
よし、効果はあったみたい。喧しかった周りの女子が静かになった。そして、表情は解らないけど、明らかに一番うるさかった女子が私の言葉に噛みついてくる。
よし、こいつがゴシック三国だ! 間違いない。
「なによ。庄田君は貴方なんかを、絶対に相手にしないわよ!」
「人に聞かれていたなんて?! 別に独り言で、個人の感想を言っただけです。三国さんに聞こえちゃいましたか?」
「個人の感想なら、口に出して言うな!」
「でも、外見だけでは判断できないから、話し掛けてみようかな?」
私はゴシック三国の言葉を無視して、さらに個人の感想を重ねる。
そして、椅子から立ち上がろうとする私を、女の子たちが取り囲んだ。
それでも、防御が手薄になっている長田君側から無理やり押し通ろうとする。リーダー格の三国、江坂、山中は、私の三方に居て、長田君側は通路のため、取り巻きたちも二人だけだ。
これで、長田君が、この二人のおしりでも触ってくれたら、完全にがら空きになり、長田君は難航不落の鉄壁の城壁に任命するのに……。あっ、そうだ!
私の足を引っかけようっと、横から出された足に、これ幸いとひっかけられた振りをしてよろめき、長田君の隣に立っていた女子を突き飛ばす。そして、その子は私の狙い通り、和田君の座っている膝の上に、横座りするようにすっぽりと収まった。
「な、なんで押したんだよ?」
「あら、ごめんなさい。だって、この人がひっかけようと足を出したんですもの。思わず私、よろめいてしまったわ」
私は、物差しを取り出し、足を引っかけた女の子の首元に突きつける。それだけで反論できない女の子。認めましたわね。それでは次は膝の上に乗っている女子です。
「貴方も早く、長田君の膝の上から退いて上げれば? 長田君、迷惑がっているじゃない。それとも、その場所が気に入ったの?」
「な、なに、ふざけんな!! 冗談じゃない」
さっさと立ち上がろうとするんですが、机が邪魔になって、なかなか、たち上がれないみたい。
ププッ、なに、そのバタバタとした激しい腰の動き、中学生にあるまじき卑猥な動きなんですけど……。それって確か横座位っていうのかしら?
そんなことを考えていると、別の子がやっと、その子をひっぱりあげて立たせてあげたいる。
「もう、美晴さん!!」
「えっ、私、何もしてませんよ。さっさと立てばいいのに、貴方が勝手に腰を振って……。ええっ、他人の情事ってなかなか見れないですよね」
「な、なによ。偶然よ! なんで長田なんかと、ほんとキモ、長田、キモ!」
なんか大事なことなんですか? 二度言いましたよ。この人。
あれ、キモい長田君って、恋愛相関図では、どんな矢印が付いてましたっけ?
でも、私にはまったく関心の無いことなので、そこで念押しされてもね。
さて、私が庄田君に向かって歩き出そうと周りを見ると、私の周りのブロックは、かなり瓦解していた。
ゴシック三国は、庄田君の机の方に行って、必死に話しかけている。きっと、私の性格の悪さでも告げ口しているのでしょう。他の女の子も同様に、男子の方に行って話しかけているようです。
そうなのです。ブロックはパスを出す方だけでなく、パスを受ける方にも必要なんです。
そうしないと、気が付いた時には、パスを出されていて、彼氏を寝取られてしまうのです。
ソースは前世の私、あの時、このことに気が付いていれば、違った未来もあったかもしれないのに……。
三国さんたち、やっと、気が付きましたか?
周りが静かになった私は、ため息をついて、再び席に戻り読んでいた文庫本を開いた。
そうそう、ラッキースケベーで良い思いをした長田君に、ウインクしながらサムズアップをして見せます。
恋愛相関図のお礼だよって、意味を込めて……。
やっぱり、デザートは自分で食べないとね!
それからは、私の周りには彼氏のいない子だけになったみたいです。
草書書きの山中は、たぶん、まだ居るんだろうけど、彼女の技はいじめられオーラを全身から出して、ターゲットにちょっかいを出されて、初めて発動するカウンターです。
こちらから仕掛けなければ、手の出しようがないはずです。それで、私は悪役令嬢もののラノベをゆっくり読んでいるのです。
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