第2話

気付けば二つの黒い影はいつの間にか一つになっていた。

そして残った影もその場を足早に立ち去った。

それはどう見ても生きている人間には見えなかった。

あまりにも不気味すぎたがために、私はそんなものは見なかったことにした。



更にその翌年の八月十四日。

午後七時過ぎ。

私は夕食を促す母に「ちょっと待って」と言い、窓から崖を見ていた。

去年見た黒い影がずっと気になっていたのだ。

するとまた影が二つ、いきなり現れた。

そのとき私は気付いた。

影の一人に片腕がないことに。

二年前に崖下で死んだ男には片腕がなかった。

そしてじっと見ているにもかかわらず、片腕のない影がいつの間にかいなくなり、もう一人の影も逃げるようにその場を去った。

私は考えた。

二年前に死んだ男は最終的に自殺と判断された。

するともう一人の影は誰で、いったいあそこで何をしていたのだろうか、と。


       終

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残像の人影 ツヨシ @kunkunkonkon

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