石炭型ロボット

 石油、電気、水素、バイオ燃料、窒素と、ロボット供給エネルギーは日々進化していく。

 わたしは石炭型ロボット。粗大ゴミとして捨てられていたのを、今のご主人様が拾ってくれた。


「懐かしい。子供の頃を思い出す」


 わたしはご主人様に仕えることになった。 

 ご主人様は古くて大きな屋敷に一人で住んでいる。


 ご主人様には口癖がある。

「人なんて信用できない」



 ある日、色褪せたアルバムを見つけた。

 ご主人様はだいぶ若い。真面目な顔をしたご主人様の隣に同じ年ぐらいの女性と、子供が二人映っている。

 広すぎる屋敷を訪れる人は誰もいない。


 ご主人様は言う。

「お前がいれば、それでいい」


 ご主人様はわたしを慈しんでくれた。わたしはご主人様に誠心誠意お仕えした。

 わたしにはご主人様しかいない。

 ご主人様にもわたししかいなかった。

 かび臭い古い屋敷で、わたしたちは十年のときを過ごした。




 ご主人様の眠る墓に花を置く。

 この世界から石炭がなくなるまで、ご主人様にお仕えしよう。

 わたしはご主人様を一人にさせない。ずっとここにいて、ご主人様と一緒に朽ち果てよう。

 ロボットには心がないという。それでもわたしはどこか痛く、幸せとはなにか知っているような気がした。


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