500字の物語

遊井そわ香

地球人さん、こんにちは

 地軸が大きく傾げ、風が止んだ。地球内部の熱が急激に冷え、地球は活動を停止した。


 人類は滅んだ。なのに自分は生きている。

 仕方なしに月に座る。


「自分って宇宙人だったんだ。知らなかった」


 優しい両親に育てられ、学校に通い、健康診断の結果は良好で、結婚して子供もいた。

 普通に人間だと思っていた。

 宇宙人の記憶はない。


 月から宇宙空間を眺めながら、仲間が迎えに来るのを待つ。


 二億年が過ぎた頃。

 生まれた星が異星人に破壊される直前、赤ん坊だった自分を両親が宇宙空間に放ってくれたことを思い出す。

 地球に流れ着いたのだ。


「なるほど。自分の種族は、その星の住人になることができるらしい」


 地球人でいることを諦め、土星最大の衛生タイタンにいる生命体と同じ姿になる。


 五百億年のときが流れた。

 地球の地軸が正常に戻り、地球は活動を再開した。

 恐竜が跋扈ばっこし絶滅した。人類が誕生し国を作った。宗教革命、植民地支配、世界戦争、IT革命が起こり、地球人は小惑星探査機を作った。

 タイタンに到着した探査機に乗り込む。

 悠久の時を超え、ようやく仲間が迎えに来てくれたのだ。


 地球へと帰還する探査機。青く美しい地球が近づいてくる。

 

「ただいま。会いたかったよ」

 

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