近くて遠い彼
都内を走る電車に私は乗っていた。通学のためだ。本当なら自転車で行ったほうが少しだけ速いのだが私はとある目的のために満員電車に乗っていた。異性として気になっている彼と会うためだ。
私はなんとか小さな身体を割り込ませ窓際を確保する。昨日は思い切ってノートに高校と名前を書いた。お返事はくれるだろうか。
キキっーーーーー
電車が駅に停車する。顔を上げると反対側の電車にやはり彼が乗っていた。見つめ合っていると恥ずかしくなるのですぐに目を逸らしてしまうが彼の顔を見たいのでまた視線を戻す。
彼はバックからノートを取り出し、私に見えるように窓に押し当てる。
『昨日は名前を教えてくれてありがとう。僕は高坂台高校の二年生の
彼は恥ずかしそうに頬を赤く染めている。
明日は土曜日。彼と会えないと思っていたが彼から誘ってくれた。
私は手でオーケーサインを作って笑う。彼も嬉しそうに笑う。それを見て私はドキドキする。
私は彼のことが好きなんだ。
私は私の恋心を自覚し、明日を楽しみにする。
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