第13話 プロは、個人事業主
国鉄という組織で働いていた人の当時の典型的な感覚を紹介するという趣旨で前話ではその筋の漫画のレビューを紹介しました。
一見ここでのテーマとは無関係のようにも思えますが、あえて、じっくりとお読みいただきたい。
さて、前回紹介した文章の冒頭に紹介した言葉を、思い出してみてください。
先輩後輩の公私にわたる付合いと、その中で誰もが成長していける職場
まさに典型的な、この手の組織や学校などで推奨される「人間関係」を、かくもはっきりと述べていると思われます。「職場」というところを「学校」や「地域」と変えてみたところで、それは違和感なく通用するでしょう。もちろん、具体的な学校名などの組織名や地名などなど、何を入れてもさほどの違和感もないはず。
ですが、これまで紹介してきた「プロ野球」の世界では、さて、こんなことが通用するのか、って話になります。
あるいは、プロ野球に限らず、これが自営業者などになると、どうか?
「野球」というスポーツは団体競技ですから、チーム内外の「他職種」の人たちとの連携は必要です。そこには一定のルールやマナーが存在しておるが、そんなことは当然かどうか論ずるまでもないこと。これは他のスポーツにおいても同様です。一見個人競技に見えるスポーツ、武道と呼ばれる世界においても、それは同じ。
だが、個々の野球選手という点においては、先程述べたような記述が必要なのかという命題に対しては、必ずしも必要ではない、というのが、私の答え。
プロ野球選手は、確かに労働者の側面もないわけではない。選手会だけでなく労働組合があることも、私は否定しないし、特に異議を述べるつもりはありません。
ですが、プロ野球選手というものは本質的には個人事業主であり、そうである以上、一人一人が「自営業者」=「商店」なのです。なかには自分のマネジメントを会社組織にしている選手などもいらっしゃるだろうが、それこそ、自分の家業を「会社」にしている人たちと、何も変わるところがない。
もちろん、新たにこの世界で「開業」、つまり新入団してきた選手たちは社会人としてこれからやっていかなければいけないわけですから、それなりの「教育」をする必要はある。特に、高卒の未成年者ならなおのこと。
だが、この世界は、一人一人が「選手」という名の「商店」なのであるから、それぞれに「企業努力」をしなければいけないのです。そうしないと、この世界で生き残っていけない。となると、「引退」という名の「廃業」を余儀なくされてしまうまでのことですな。
先程述べたような言葉を錦の御旗に、群れ合いなどしていられる場所でないことは、言うまでもないでしょう。
それこそ、人と同じこと=言われた通りの練習だけをしていては、金田正一や野村克也のレベルまでは言うに及ばず、この世界で生きていくことすらかなわなくなって「廃業」させられてしまうのがオチ。そりゃあ、野球だけが世界のすべてではないかもしれないが、だから、いい加減にしてもいいという理由が成立するわけじゃない。逆に言えば、言われたことなんぞ適当にさぼってでも、自らのやるべきことをきちんとこなしていけば、この世界で生き残れる可能性は高まる。
もちろん、あまりにひどいことをしたり、やりすぎになったりしてはいけないが、創意工夫や自己管理は、当然かどうか論ずるまでもなく必要なことです。
プロには、そこらの学校教育の現場やそれなりの規模のある仕事場などではびこっている「群れあい」「慣れ合い」「甘え合い」など、必要ありません。
私自身文章を書く「仕事」を始めてよくわかりますが(それまでの仕事においてもそうだった)、まさに、これまで述べてきたとおりの職業観を持っていないと、そもそも仕事にならんのですよ。
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