第16話 表彰式
表彰式の日、僕と美央は、スーツとドレスで会場に向かった。
受付では、花のコサージュを受け取り、胸元につける。全国大会で演奏した証みたいなものだ。
先生も受付をしている。可愛らしい花のコサージュ。僕のものとは少し違うようだ。
横には圭吾さんと保木先生もいる。
「タオくん、こっちこっち!」
昨日とは違う、ドレスアップしたはるか先生が綺麗で、テンションが上がり走っていく。
「先生~!先生の花のコサージュ、色が違いますね」
「タオくん、保木先生とはるか先生は、指導者賞の受賞バッチなんだよ」
「そうなんですね!で、圭吾さんは」
「圭吾くんはね、なんと来賓!私たちよりいい席で表彰結果を聞くのね~偉くなっちゃって、もう!」
保木先生が、圭吾さんの頭を小突く。
「すべて保木先生のご指導のお陰ですってば」
「口も達者になっちゃって!さ、座るところが決められているわね、向かいましょう」
圭吾さんも、師匠の保木先生には頭が上がらないらしい。
「美央ちゃん、今日のドレスも可愛いわね」
なんと美央は、本番と別のドレスを用意されていた。
「はるか先生、実は本番のドレスは誂えで、汚したくないんですよ」
「まぁ、あのドレス、布地の光り方もすごいと思っていたら…!」
「そうなんです、タオは男の子だしスーツばかりでしょう?女の子なんで張り切り過ぎました」
「ふふふ、美央ちゃんはこんなにママに愛されて幸せね」
そう、表彰式の後は立食パーティがある。
ドレスを脱いでもいいが、美央が立食パーティもドレスを着たいと言い張って、2着もドレスを東京に持ち込んだのだ。
「じゃあ、ここで。またパーティの時に合流しましょう」
演奏者と指導者、そして来賓の席は別々だ。
そして演奏者も級ごとに異なるため、僕は左側の中学生が多くいる椅子の方へ向かった。
…もう先生がどこにいるかも分からないな。
人でごった返している。
全国大会に出られる人は一握り、とはいえ、全級の人数とその保護者、指導者が加わればそれなりの人数になるのだ。
表彰式が始まり、小さい年齢が受ける級から、番号と名前が読まれていく。
美央の級、ベスト賞…銅賞…まだ美央の名前は呼ばれない。
銀賞…
「38番 如月 美央」
ワッと右側の席で声が上がった。ついお母さんが声をあげてしまったのだろう。
良かった、金賞は無理だったけど銀賞でもすごい。
先生も喜んでるだろうな。
ドレスを着た美央が、表彰台に向かって歩いていく。
ちょうど僕の前を通ったから手を振ったら、笑顔で振り返してきた。
僕も名前を呼ばれるといいな。
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