第15話 ピアノに愛されて
「ほら」
圭吾さんに背中をポンと叩かれ、客席に入る。
演奏の出入りの時間に着席しないと、演奏者に迷惑がかかる。
ささっと慌てて、先生の座っている席の横へ。
僕が歩いてくる様子を、はるか先生はずっと見ていて、すっと横に座って先生の顔を見ると、まだ潤んだ瞳…。
「やっぱりタオくんは、ピアノに愛されていた」
こそっと耳元で囁かれる。
「はい…」
良かった…こんな泣いて喜んでもらえるなんて…本当に良かった…。
その様子を、圭吾さんはにこやかに見守ってくれてる。
それは、はるか先生に対してなのか、それとも僕に対してなのか…
はるか先生の前の列に、お母さんと美央が座っていた。
振り返って、2人からガッツポーズをされる。
そして、その横に保木先生。
穏やかな顔で、僕に笑顔を向けてくれた。
全国大会の発表は明日の表彰式で行われる。
妹の美央の演奏は昨日すでに終わっていて、僕たちは明日の表彰式まで結果は分からないのだ。
他の人たちの演奏も、さすが本選を潜り抜け、全国大会に出場するメンバーだった。
でも、もう他人と比べても仕方がない。
僕は僕の演奏をやり切った。
でも、もし結果が伴ったら――
演奏前に決めていた通り、先生に告白しよう。
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