第7話 出会い

その日は地元で行われる花火大会だった。


「タオくん、レッスンは7時までにして、それから花火大会見よう!」

「はい!」

今日の花火大会は、はるか先生のレッスンスタジオの庭から見る予定で、朝からワクワクしていた。


「そろそろ圭吾がくるから、4曲通しで演奏するつもりでいてね。あ、圭吾のことは保木先生から聞いてるよね?」

「聞いてます。保木先生の門下生だったんですよね」

「そう、音高受験までお世話になってたみたいよ」


僕が私立中学に進学して寮生活になることが分かった時に、はるか先生が保木先生を紹介してくれた。

僕が進学する中学の場所が、はるか先生の大学の同級生、圭吾さんの出身地と同じだというので連絡をとったのがキッカケ。


つまり、圭吾さんは僕にとって、保木門下の先輩にも当たる。

「話は聞いてるけど、会うのは初めてです」

「そんな堅苦しい人じゃないから大丈夫よ、でも本番のつもりで4曲通しで弾こうね」


圭吾さんは、クラシックのコンサートなんかを企画する会社に勤めていると聞いてる。あと、若手ピアニストの育成なんかもしてるらしい。


僕のノクターンは、まだ出口が見えない。あれから悩み続けているけど、これ!という演奏が出来ないままでいた。


「あ、来たかな」


レッスンスタジオの玄関のドアが静かに開く音が聞こえて、先生がレッスン室のドアを開けにいく。


「いらっしゃい」

「よ!」


レッスン室に入ってきたのは、長身の男性。

ピアノの椅子に座る僕を見て、「タオくん?」と聞いてきた。


僕は慌ててイスから立ち上がって、圭吾さんの方に歩いていこうとする。


「ああ、いいよ、そのままピアノの椅子に座ってて。話をする前に演奏を聴こう」


圭吾さんと思われる人は、ピアノの鍵盤が横からよく見える位置の椅子に座り、僕の演奏を聴く準備が整ったようだ。

先生は、その横の椅子に座る。


僕は、譜面台にある楽譜を全て片付けて椅子に座り直す。


スカルラッティの響きを頭の中で響かせてから、指を鍵盤に置き演奏を始めた。

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