第4話 年上の女性

あんな演奏をする2人の間になんて、入っていけるはずない…

舞台での絹さんの演奏は、圧倒的なもので、私に別の意味で絶望を与えた。


結果発表の時間がアナウンスされ、フラフラでホールを出る。

発表、知りたい。タケルくん、通過してるよね、通過してたら本選も聴ける…。


会場のホールから離れた所に静かに座る。ガラス越しに受付場所が見える位置に座ったのは、ここならタケルくんに気付かれることなく、タケルくんの様子が見えるかと期待したから。


タケルくんの元に、女性が駆け寄るのが見えた。

ショートボブが大人っぽい雰囲気の、小柄で可愛らしい女性。

低めのパンプスに七分丈のパンツをスラッと着こなしてて、同性から見ても嫌味がないタイプ。


お姉さんかな?一つ学年が上のお兄さんは知ってるけど…30歳はいってないよね?28歳くらい?お姉さんにしては歳が離れすぎてる気はするけど。


わ!女の人がタケルくんの手を握り、親し気に話してる…!

見上げる女性に、じっと目線を合わせながら嬉しそうに笑顔を向けるタケルくん。


だ…誰なの?!


その女性がタケルくんの側を離れると、陸郎くんがタケルくんに歩み寄る。

…バレる!!


私は慌てて、タケルくんが見えない方へ走っていった。


ドキドキした。


タケルくんのあんな笑顔、学校では見たことない。

クラスこそ違うけど、中学2年の後半から2年くらい見つめ続けている私にとって、タケルくんのあの笑顔の衝撃は強かった。


結果発表の時間まで会場の外で知り合いに見つからないよう過ごし、誰もいなくなった頃にそっと貼り出しを見に行った。


タケルくんも絹さんの名前もあった。つまり本選も演奏が聴けるということ。


良かった…!タケルくん…!!

まるで自分のことのように嬉しい。いや、自分のこと以上かも。

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