第2話 異彩を放つ女性

高校に入学して、タケルくんに何とか話しかける機会はないかと私が手をこまねいている頃、同じクラスの毛利絹さんは異彩を放ってた。


同性でありながらも、一瞬で見る人の目を止めてしまうくらいの美しい彼女。

クラスの女子も話しかけづらいくらいの、凛とした佇まい。

勉強もトップクラスで、文句のつけようがなかった。


そんな彼女が事あるごとに隣のクラスに出入りして、事もあろうかタケルくんに話しかけるようになった。


どうやら絹さんもピアノを弾くらしい。

それも相当な腕前みたい。


ある日、下校しようとしたら、絹さんが校門の前に立っていた。

孤高の人という印象の絹さんが、誰かと待ち合わせ?

まさか…

嫌な予感がして、駅に行く足取りを少し緩めて後ろを振り返った。


そこには、絹さんと並んでるタケルくん。


…どうして…!!


ショックと同時に、お似合いとも感じてしまう。

ピアノをある程度まで極めるとああいう雰囲気を纏うのか、と思ってしまうほどの一体感に包まれた2人。


ほたるさんと登下校してる姿を見た時には感じなかった嫉妬心が渦巻いた。


私の方が先にタケルくんに出会ってたはずなのに…!


でも…私にはタケルくんとの共通点すらない。

せめてピアノを続けていれば…

いや、バイエルを何年もやってたような自分では話にならないか…


半ば諦めに似た感情がすぐに私を支配する。


タケルくんを見続けられるだけで、幸せーーー


そう自分を無理やり納得させるしかない。



そんな時、タケルくんがコンクール予選に出場すると知った。

仲の良さそうな陸郎くんとほたるさんが廊下で話しているのを偶然聞いたのだ。


日程と会場をネット検索して、タケルくんが出るであろうコンクールを特定することができた。


タケルくんのピアノが聴ける…!

合唱の伴奏しか聴いたことがない。ソロだと、どんな演奏をするのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る