第41話 そして、二人は。

これまで私は。

この青い空の上から、何かを見て。

様々な世界を感じて。


刹花やニクス達に会って。

笑い合って……。


何かを感じるたびに。

気持ちが増えていって……。


<小さな星>リトル・スターを見つめ続けて……。

そして私は知った……。


私が何者なのかを……。

私が何者であったのかを……。


そうだ。

そうだったんだ……。


私は……。

私の本当の名前は……。


―――


雨の降る中。

羽衣は雨の降りやまぬ空を見上げている。

そこに存在するはずの人を見つめている。


……羽衣は<小さな星>リトル・スターとして願いを叶えてきた。

……<小さな星>リトル・スターとして人々の願いを叶えてきた。

……様々な人々の願いを叶えてきた。

……様々な人々の<夢>達を奪ってきた。

……そして私は人々の<夢>を使って羽衣は願いを叶えた。

……羽衣の記憶を取り戻すという、願いを。


……羽衣の中では今も人々の<夢>が淡く輝き続けている。

……羽衣の中で輝く人々の<夢>達に触れあうたびに。

……羽衣の中で輝く人々の<夢>達を感じるたびに。

……気持ちが増えて……。

……そして羽衣は知った……。


……羽衣が初めに何を願ったのかを……。

……羽衣の初めの願いが何であったのかを……。


……そう……。

……羽衣の……。

……羽衣の……<小さな星>リトル・スターの初めの願いは……。


―――


私は、雨にうたれる<小さな星>リトル・スターの前にゆっくりと降り立つ。

そして<小さな星>リトル・スターを優しく抱え込むように抱きしめる。


<小さな星>リトル・スターも私の事を抱きしめ返してくる。



「翼希……羽衣は初めの願いを思い出したよ」



<小さな星>リトル・スターは私を抱きしめながらそう告げる。



「私も、私が何者だったのか。思い出したよ……<小さな星>リトル・スター



<小さな星>リトル・スターに言葉に私は優しくそう応える。



「「戻ろう……一人の存在に」」



私達は口を揃えてその言葉にする。


そう……私は。

私達は……元々一つの存在だったのだ。

私達は……元々、一人の人間だったのだ。


私達二人の気持ちが重なった時。

羽衣達は一人の存在になっていた。


私は、翼希であり、<小さな星>リトル・スター

羽衣は、<小さな星>リトル・スターであり、翼希。


私は、翼希は、羽衣の願いから生まれた存在。

元々、羽衣達は一人の存在だったのだ。


羽衣の、はじめの願い。

それは……『私が天使だったらいいのに』。

その願いは、翼希という形となって叶えられた。


羽衣は一人の天使として飛び立つ。

羽衣は、この世界の『最後の願い』を叶える為に背中の白い羽を羽ばたかせる。



それは、この<夢>が失われてしまった世界で。

羽衣達が叶える……『最後の願い』の物語。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る