第95話 新たな魔石探しと連携プレー!? 後編

 ――素直に楽しい。

 いや、これもギルド? 依頼の一つではあるが。


 ルティが楽しそうに破壊していたのが頷ける。

 拳スキルがあるからこそだが、面白いくらいに岩を砕けまくりだ。


 今のところ山盛りになっている火山岩の中に、魔石の気配は無い。

 火口に棲む魔物は確かに強敵そうではあるが、レアな魔物が火山で死ぬか疑問だ。


 それにしても、


「こんのぉぉ~!」

「当たらないのだ! いい加減、大振りなことに気付けなのだ~」

「ムキ~!!」


 予想通り、退屈した彼女たちによる小さな戦いが起きていた。

 素早さでシーニャに敵うはずもなく、ルティの拳もくうを切るばかり。


 岩を砕き続けるのも少々飽きが来そう。

 だが、おれでなければ魔石は反応しないという、何とも縛りのある仕事だ。


「シーニャ、体は大丈夫か?」

「ウニャ! アックのおかげなのだ!」

「おれの? 何かしたかな……」

「アックとシーニャ、繋がっているのだ。アックが元気。シーニャも元気! ウニャッ」

「ど、どどど、どういう意味なんですか!? 聞き捨てならない話じゃないですか!」

「落ち着け、ルティ。聞き捨てていいぞ。シーニャとおれはテイムの関係だからな。そういう意味だろ」

「なるほど~……落ち着けるはずがありませんよ!!」


 シーニャとの繋がりという話は、合点がいく。

 砦で出会った薬師への警戒心も、シーニャだけが持っていた。


 黒い気配を感じることが出来たのは、ルティのパンの効果が大きそうだが。

 そういえば、


「ルティの焦げ焦げパン……あれは、おれ専用か?」

「いえ~、シーニャも食べましたから、彼女にもその効果がありますよ! 暗闇耐性効果ですっ」

「――暗闇耐性? いや、違ったぞ。なぁ、シーニャ?」

「ウニャ……全然違ったのだ」

「あれれ? も、もしかして目分量を間違えた!? はぁぅぅ……」

「まぁ、おれもシーニャも得るものはあったから、落ち込まなくてもいいぞ」

「料理の腕も磨かないと駄目ですね……やるぞぉぉ~!」


 パンは料理じゃなくて、錬金術で作ったのだろうか。

 ルティの加減がよく分からん。


「アック、魔石はまだなのだ?」

「う~ん……やみくもに砕いても、そう簡単には行かないな」

「アック様。また燃やしてはどうですか? それか、岩に魔法をですね~」

「冷えて固まった火山岩をか? 燃やすって、マグマよりも火力の強い魔法となるとな……」

 

 とにかく手当たり次第に、岩山の岩を拳だけで壊している。

 粉々ではなく魔石サイズくらいにまで砕いているが、これといったものは見つからない。


 ルティの言うように、冷え切った岩を燃やすのも手ではあるが……。

 いや、魔石が魔力に反応するとすれば、試してもいいのか。


「今からおれは、攻撃属性魔法を岩石に込める。その後、シーニャが回復魔法をかける。ルティは、回復魔法に反応した岩石を判別してくれ」

「えぇっ!?」

「ふんふん……?」

「シーニャはおれから受け取った石に対し、回復魔法を込めるんだ!」

「分かったのだ!」

「込めた石をルティに渡して欲しい。ルティは、その石が魔石だと感じたら手元に残せばいい」

「アック様、わたしは魔法を使えませんです。魔石と分かるわけが~」

「ルティは、回復魔道士だろ? 錬金術と同様に感覚を研ぎ澄ませばいい」

「は、はいい~」


 あるかどうかを試しても、時間だけが過ぎ去るだけ。

 手っ取り早く可能性にかけた方が効率がいい。


 魔石を腹の中に含んだ強い魔物がマグマで熔け、石と化した。

 だが魔石自体はどこかに潜んでいる。


 そうなれば、魔力を込めて石に触れれば反応を示す。

 普通に回復魔法を石にかけたところで、回復するわけがない。


 しかし魔石であれば属性攻撃に反発した上、回復魔法に反応して熱を放出するはずだ。

 苦し紛れの手段ではあるが、シーニャが来たことで試すことが出来る。


「よし、やるか」

「ウニャッ!」

「が、頑張ります」


 今まで山となった岩石を殴りまくるだけだった。

 そこに属性魔法を込めた拳を、思いきり振り下ろす。


 拳の力で岩石が砕けるのは同じだ。

 その中から手の平サイズの岩石の中でも、形が崩れていないものが出来始めた。


 それに対し、シーニャが回復魔法を放つ。


「ウゥゥ~ニャッ!!」


 シーニャが回復魔法を放っても、砕けてしまう石がある。

 ルティは、その中から強そうな石を探さなければならない。


「ほへほえぇ~……」

「根性だぞ、ルティ!」

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