第94話 新たな魔石探しと連携プレー!? 前編

「ウゥゥ……アック、アックはどこなのだ?」

「あ、あら? まさかもう回復を?」

「どこなのだ……会いたいのだ」

「――く、うっ……!? ア、アックさんは鉱石ギルドに……」

「ウガゥ!」

「……ゲホゲホッ。あの子は普通の獣人じゃないのね。ルティシアのライバル……かな?」


 ◇◇


 ルシナさんに言われた通り、ドワーフたちが集まっている場所に来てみた。

 そこには入り口で見た冒険者たちが、生き生きと働いている光景が見られる。


 ルティが手伝いに行っているのは、火口近くの工房らしい。

 そこにたどり着くと、何やら気合いの入った声が聞こえて来た。


「えいやぁぁぁぁ……!!」


 どうやらギルドはここで違いなく、声の主は間違いなくルティだ。


「ルティ、お前何やってんだ……?」

「あっ! アック様っ!! 見ての通りですよ~」

「見ての通り……」


 火口近くだけあって、熱気もすごいが火山岩の数も半端じゃない。

 その岩をルティは、拳一つで砕きまくっている。


「……それがルティのお手伝いなのか?」

「いえいえいえ、アック様が来るまで遊んでろって言われちゃいましたので、遊んでただけです~」


 遊び……って、遊びで火山岩の山を砕くとか相変わらずだな。

 ルティは最近拳を使うことが少なかったし、発散してくれればいいか。


『オマエが魔石使いの男か?』

「ぬおっ?」


 足下で聞きなれない声が響いて、思わず驚いた。

 見ると、ドワーフのおっさんがおれを見上げている。


 戸惑う間もなく、すぐに質問を投げかけて来た。


「魔石はどこから手に入れるものだ?」

「あぁ、それは強い魔物を倒せばごくまれに……」

「……オマエ、手に入れた魔石を減らしただろう?」

「あぁ、減っているな……」

「魔石……石は磨いているのか?」

「磨く? したことはないな」

「……」


 何やら一方的に聞いて来るが、逆らっては駄目な気がする。

 ルティは指示があるまで岩を殴りまくっているし、何がしたいのやら。


「おれが出来ることがあると聞いて来た。それが石磨きか?」

「イヤ、磨くのはルティシア。オマエは岩を砕け。オマエであれば、魔石を見つけられる」

「どういうことだ? 魔石がここにあるのか?」

「火口に棲む魔物、火山噴出時に熔かされる。マグマが冷え、火山岩となり……体内の魔石も……」

「――! なるほど、おれなら魔石を見つけられる。そういうことか?」

「ルティシアでは、魔石を引き寄せられないハズだ。オマエが魔石を見つけ、ルティシアが磨けば見つけられる」

「一応聞くが、それが依頼だな? ギルド依頼でいいんだよな?」

「……」


 言うだけ言って、ドワーフのおっさんは小屋に戻って行く。

 魔石ガチャで町を呼び出しているし、おれのことは知られているわけか。


 魔石ドロップの強い魔物は、最近狩りに行っていない。

 それなのに偽スキュラを封じたことで、魔石の数も減っている。

 

 新たな魔石を得ることが出来れば、何か別なものを得られそうだ。

 そうと決まれば、ルティと代わっておれがやるか。


「ルティ! 交代だ。ルティはおれが選んだ石を磨いてくれ!」

「はいっっ! お任せください!」

「ウニャッ! 任せるのだ!」


 ……ん? 何か、シーニャの声が。


「えぇぇっ!? どうしてシーニャがここにいるんですか!?」

「シーニャ、アックの女! アックが必要! アックの助けになるのだ! ウニャ」


 女って……、ルティの部屋で寝かせていたのにもう回復したのか。

 フィーサの姿は無いようだが、回復の度合いが違ったようだ。


「アック様ぁぁ~どうするんですか~?」

「……おれは岩を砕く。ルティは、シーニャと協力して石を磨いてくれ」

「そ、それって連携しろってことですか? それもこの子と……」

「同じ回復系なんだから、イイものが生まれそうだろ。ケンカするなよ?」

「そんなぁ~」

「ウニャ! ドワーフに負けないのだ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る