第96話 専用魔石、出来上がる!?

『はひ~はひぃ~……ア、アック様ぁ~……』


 おれもシーニャも、かなりの魔力を消耗した。

 込められた石を判別しているルティの息も、激しく上がっている。


 とにかく目の前に見える岩石に向けて、ありったけの魔法で攻撃した。

 すぐに砕けた石もあったが、それは気にしないとして。


 回復魔法を放ち続けたシーニャも、相当疲れている。

 後はルティの勘次第だ。


「ど、どうだ……? どれくらいの魔石が集まった?」

『ひぃふぅ~……』

「フニャ……眠くなったのだ」

「シーニャ、もう少しだぞ」


 ルティは指差しで、自分が選んだ石を数えている。

 それなりに数はあるようだ。


 そこに、

『ルティシア、魔石は見つけたのか?』


 せかせかと動くルティの後ろに、ドワーフのおっさんが立っていた。

 ルティが選んだ石を手に取って、一つ一つ凝視。


 良さそうなものだけを、手元に残しているようだ。

 魔法に耐えたとしても、魔石と認められないものもあるらしい。


『……フン、ルティシアが見つけた魔石は全部で5つだ。それを上手く使うのも、オマエ次第。ドワーフは、そこまで干渉しない。魔石はオマエたちのもの。報酬として持って行け』


 なるほど、やはりそうか。

 ギルドとは違うと思っていたが、ルシナさんにでも頼まれたんだな。


「ルティ、よくやったな! 疲れただろ? 家に戻ってゆっくり……」

「アック様、抱っこしてください~」

「シーニャ、シーニャもなのだ~」

「ふ、ふたり同時にか!?」

「はいです~」

「なのだ~」


 おれだって疲れがあるんだが……仕方ないか。

 ルティをおんぶして、シーニャを抱っこすることにした。


 魔石はひとまず腰袋にまとめて入れて、部屋で確かめればいいか。


「アック様の背中~背中~!」

「フニャン~浮いているみたいに気持ちいいのだ~」


 魔力に余裕があるので、ズルくさいが風魔法でシーニャを浮かせた。

 ルティの家まで誰かに見られるでも無かったので、良しとしよう。


 ◇


「おかえりなさい、アックさん。どうですか? 魔石、見つかりましたか?」

「ルシナさんの差し金ですよね?」

「いえいえ、そんなことはありませんよ。ルティシアとシーニャちゃんは部屋に寝かせて来ますから、お見せ頂いてもよろしいですか?」

「はぁ、まぁ……」

「では、行って来ますね」

 そう言うと、ルシナさんは力強くふたりを抱きかかえて、部屋に連れて行った。


 何たる力なんだ、あれは。

 おれより腕力があるぞ。


 それはともかく、見つけて来た魔石をテーブルの上に広げた。

 見た目は、今までの魔石と何ら変わりはない。


 ただ、触れても反応しない魔石があることに気付く。

 正確にはルティやフィーサの名前が、一瞬魔石から見えるだけだ。


 もちろん、シーニャの名前も見える。

 残りの二つは名前が確定していないのか、無反応だ。


「う~ん……」


 名前が出るということは、ガチャで彼女たち専用のアイテムが出るのか。

 それならガチャの精度も上がることになる。


「――どうしました?」

「あ、いや……」

「それが魔石ですか。意外と小さいものなんですね」

「あれ、見たことなかったんでしたっけ? まぁ、石板ほど大きくは無いですよ」

「初めて見ますが、魔法文字はアックさんだけが見えるんですか?」

「いえ、ルティとフィーサは見えるみたいで」

「……なるほど」


 ルシナさんは、一つ一つ手に取って小刻みに頷いている。

 どこまでのことを分かっているのだろうか。


「アックさん。これらの魔石は、恐らく彼女たち固有の魔石です。アイテムに限らず、スキルも与えられるんじゃないでしょうか?」

「でもガチャはおれが……」

「そうです。アックさんのお力で、味方である彼女たちに恩恵を与えられる魔石ではないかと」

「なるほど……」

「もちろん、乱用は避けなければなりません」

「そういうことなら、以前よりガチャをしなくなったので問題は無いかと」

「問題大有りですっ!!」


 ルシナさんが突然、声を荒らげた。

 やはり何か知っているみたいだな。


「え~と?」

「アックさん! あなたはうちのルティシアを、魔石ガチャで呼び出しました。それはあなたが求めたからです」


 ルティの時は無意識のうちに呼んでいたが……。


「まぁ……」

「とにかく! せっかくのスキルをお持ちなのですから、アックさんはガチャをするべきです! そうじゃないと、今あるスキルで満足してしまいますよ!! よろしいですか!」

「は、はい。よろしいです……」

「よろしい。それではあの子たちが目覚めるまで、本当のギルドに行って稼いで来てください。紹介は済んでいますから、ドワーフ族のギルドに顔が効きますよ」

「……それはどうも」


 何から何までお見通しか。

 ルティのお母さんには敵いそうにないな。

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