第23話 貴族騎士国:アグエスタ

 ルティの道案内で、貴族騎士ノーブルナイトが住むと言われる国にたどり着いた。

 ロキュンテからは一本道で、迷うことは無く魔物に遭遇することも無かった。


 どうやらルティは退屈していた時に外に出て、目に見える魔物を狩ってしまったらしい。


「アックさん、ここがノーブルナイトの国、アグエスタですよ! 思ったより近かったですねっ!」

「……ふぅ~」

「あれれ? どうかしたんですか~? 回復ドリンク飲みます?」

「そ、それよりも、宿屋に……」


 途中まで人の姿で歩いていたフィーサは、途中で剣に戻りそのまま鞘から出て来なかった。

 スキュラに関しては、嫌味の一つですら言えそうに無いほど疲れ果てている。


「ではではっ! こちらですよ~」


 張り切るルティの案内について行くが、正直言って手持ちのお金がほとんど無い。

 そういうことで、一番安めの宿を探してそこに泊まることにした。


 しかし――


「え!? 一つの部屋!?」

「冒険者に貸す部屋が足りないって、言われちゃいまして~」

「…………なるほど」


 貴族の国だからなのか待遇は最低のようだったが、幸いにして大きめのベッドが用意された。

 おれを抜かせば十分に広かったので、ベッドはフィーサとスキュラが使うことになった。


 ルティも寝られたのだが、彼女は床でもどこでも寝られるとかで、特に望みも言わなかった。

 あの母親の下でしっかりしつけられているのだろうが、どこまで頑丈で強い娘なんだろうか。


 感心しながら床に荷物を置くと、ルティが声をかけて来た。


「アックさん、宿の外に出ませんか?」

「こ、これから……?」

「えっと、一緒に見に行きたいところがありまして~駄目ですか?」

「……行くよ」


 疲れ果ての彼女たちを部屋に残し、ルティと二人だけで街に出ることにした。

 夕刻に差し掛かったせいか、酒場や雑貨屋などから光が灯りだす。


 貴族騎士の国ということは、裕福な国ということなのだろうか。

 確かにここでなら、転送士として稼げそうだ。


 それならまずはこの国のことを知る必要があるし、信用できる味方も作っておきたい。


「――アックさん~。聞いてますか~? もしも~し?」


 どこかに情報屋がいればいいが、そうなると酒場に行く必要が――。


「うん? 何かな?」

「じゃ~ん! 着きました!!」

「アグエスタ剣闘場……剣闘場?」

「そうなんですよ。母さまが転送士が~って話してましたけど、わたしはアックさんのお力を、ぜひここで使って欲しいなぁと思いまして!」


 貴族騎士の国に剣闘場があるとは驚いた。ここで騎士たちは腕を磨いているのだろうか。

 ここで金を稼ぐにしても、中々に難易度が高そうだ。それでもおれにはフィーサがいるし問題無いか。


「そうだな。考えてみるよ」

「ぜひぜひ! アックさんなら勝てますよ!! その為にはもっとドリンクを改良しちゃいます!」

「ほ、程々に……」


 剣闘場で名声を高めれば、情報屋も自然と近づいて来るかもしれないな。


「ではでは、宿に戻りましょう!」

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