第21話 強さの秘密 ルティシア・テクス編

 ――これはおれとルティが出会う前、つまりレア確定ガチャで引かれる前の話だ。


 彼女の故郷は火山渓谷ロキュンテという町で、ここにはドワーフが多く暮らしている。

 ドワーフ族が人間と共存して、生活をする数少ない所だ。


「ルティ、今日も山へ?」

「はいです! どこで何が起こるか分からないので、日頃から鍛えて鍛えまくって、強くありたいんです!」

「程々にな……」


 ドワーフ族の父であるテクスと、人間の母ルシナとの間に生まれたルティには、天性の才能があった。ドワーフ族特有の器用さと、腕力が彼女には備わっている。


 そして占術士をしている母は、薬師くすしでもあった為、母の下でルティは回復魔道士を目指していた。


「てぇい! とぉぉっっ」

 

 彼女は拳だけで、火山に棲みつく魔物を倒せる。

 ルティにとっては日常茶飯事なことだ。家に帰れば魔物から取れた皮をなめし、肉を加工したりと充実した毎日を過ごしている。


 そんなある日のことだ。


「ねえ、ルティ。回復魔道士を名乗りたいのなら、火口の灼熱湯で温泉水を汲んで、そこから回復水を作りなさいね」

「はい、母さま。それじゃあ、樽を持って行ってもいいですか?」

「いいわよ。それから、帰りが遅くなったとしても……頑張りなさいね」

「……? はい~! 行ってきます!」


 母の言葉の意味は深く考えずに、ルティは温泉水を汲みに山に登る。

 ルティは灼熱の湯を樽に汲みながら、回復と力を上げる効果のある水を作り始めていた。


「あれれ!? け、景色が遠いですよ……!?」


 そんな時、彼女は自分の体がどこかに呼ばれているような感じを受けた。

 そして――。


「むむむっ!? 洞窟!? しかも岩が落ちまくり! 誰かいますか~?」

「…………ぅ」

「あれ、これは魔石? わ、わたしの名前が何で~!?」


 魔石の傍では、ワイバーンが倒れている。

 さらにその近くに人が倒れているのに気づき、ルティはワイバーンを持ち上げ遠くに投げることにした。 

 

「あわわわっ……し、死んでる? と、とにかく、外に運ばないと! わたしが助けますからね~」


 ◇


「う……」

「口移しで……い、いやいやそんなことは無理無理……!」

「…………」

「あ、あれっ? わたしの樽もここに来ちゃってますよ!? そ、そうだ!」


 ルティは樽も一緒に移動して来たことに気付き、回復水を浴びせることを思いつく。

 

「よぉし、こ、これなら目覚めてくれます! 早く起きてくださいね~!」

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