第6話

 よく分からないけど丸く収まったようで良かった、のかな?

 今は余計なこと言って波風立ててはいけないと俺の中の何かがアラート出している。


「ひとまず一件落着したらお腹すきましたね。今夜は肉じゃがを作ってきたので温めれば食べられますよ。ご飯もタッパーにたくさん詰めてきましたので三人で食べても十分だと思います」


さっきキッチンに置いてきた保温袋のようなものは肉じゃがとご飯だったんだな。





「ごちそうさま」


「お粗末さまでした」


「さっちんがこれ作ったの? すごく美味しかったね。私も料理できるようにならないといけないな」


「では今度、美里ちゃんと一緒に作ってみましょうか」


「健ちゃんに美味しい料理食べてもらいたいものね。さっちん、お願いね」


 なんだかほのぼのした会話をしているのだけれど、さっきまでの修羅場然とした雰囲気はどこに行ったのだろうか。


 あと、重要な聞かなければいけないことが一つ。


「あのさ、さっき二人が言っていたやつ、何?」


 キョトン顔の二人。いやいや分かっているよね?


「俺のことを二人でシェアして専有してどうのこうのってやつだけど?」


「ああ、アレですか」と今気づいたような口ぶりの紗月が続ける。


「そのままですよ。私も美里さんもあなた、健人のことが大好きです。大好きな健人にどちらかを選ばせるなんて酷いこともできませんし、何より私たちがもし選ばれなかったら悲しいでは有りませんか?」

 ……うん、ここまでは分かる。


「なので、あなたは選択する必要も無く、私たちも悲しまない方法として、私たちで健人をシェアすることにしました」

 いきなりわからん。


「もう、健ちゃんは何で物分りが悪いの? そんなんだからウチがアピールしていたのに全然気づかなかったんでしょ?」

 え、やっぱりミリも乗り気なんだ……


「簡単に言うからね。ウチとさっちんはふたりとも健ちゃんの恋人になったの。片方ではなくて両方ね。分かる?」


(コクン)


「だから健ちゃんはウチもさっちんも自由に扱ってくれていいの……よ。あんなことしたりこんなことしたりしてもOKなんだから、ね」

 ミリは途中で真っ赤になって声も小さくなってしまった。聞こえたけど。


「私たちのどちらがどれくらい健人を独り占めできるかは私たちでルールを決めるから健人は気にしないで、居たい方と自由に一緒に過ごしくださいね。……でも片方に偏ったりしたら余り良くないかも知れませんよ? 私たちけっこうこう見えてヤキモチ焼きなのです。もちろん私たち二人を一緒に可愛がってくれても問題ないですよ」


 ん、理解した。誰も悲しんだり辛かったりしないように二人で決めてくれたんだな。若干ヤンながすることもないけど、ありがとう。


「分かった。ふたりとも俺の恋人だ。俺もお前たちに相応ふさわしい男にならないとな。たくさん愛してやるから覚悟しておけよな」

 あははっは、どうにでもなれっ!


「「ありがとうっ大好き」」

 二人を両の手で抱きしめた。





「では、今日のところは私は七階のので後は美里さんとごゆっくりしてください」

 紗月はいった。けど、なんだか変な言い回しをしていたのが気になる。けどけど、今はそんなことよりもミリと二人きりという状況の方が問題だ。


「ウチはシャワーを浴びてくるね」

 ミリはそう言うとリビングから出ていった。


(やっぱりそういうことだよな。さっき俺に全部上げるって言っていたしな)



「ね、ねぇ健ちゃん。ごめん、明かり消してもらっていい? やっぱり恥ずかしい」

 シャワーを浴び終わったようで、ミリが声をかけてきた。


 俺はソファーから立ち上がり、リビングの明かりのスイッチをオフにする。リビングは、何かの機器のLEDの緑や赤の光だけが灯っているだけになる。目が慣れるとゆっくりとミリがバスタオルを身体に巻いただけの姿で、ソロリソロリと近づいてくるのが分かった。


「こっちだよ。おいで」

 俺もミリの想いに応えないといけない。手を伸ばして、ミリの手を取る。


「怖いか?」

 ミリの手は震えていた。


「ううん、ぜんぜん怖くないよ。どちらかと言うと嬉しいんだよ。ずうっと大好きだった健ちゃんに抱いてもらえるんだよ。嬉しすぎて……」


 頬を流れ落ちる涙がLEDの光に輝く。

 俺はミリの頬に唇を添える。一瞬ピクリとしたミリは俺の方に向き直り目を閉じた。

 幼馴染の俺たちは一七年目にして初めて唇を重ねた。


「あぁ、大好き。健ちゃん大好きだよ。ウチ選んでくれてありがとう。んんっ」


「待たせたせてしまったな。でも、これからはずっと一緒だ。大好きだよ美里」

 抱きしめあと、首元に唇を這わす。首から肩へ、肩から肩甲骨、バスタオルに隠されている胸元へ……


「はぁはぁ……ね、ねぇ、お部屋に連れて行ってよう」

 切なげに言われてしまえば叶えるしか無い。

 俺はミリをお姫様抱っこでかかええあげ、俺の部屋へと連れて行く。


 俺の部屋は常夜灯代わりに電球色のLEDライトが置いてある。ぼうっとした明かりにミリの赤らんだ顔が映える。



 ミリの身を包んでいたバスタオルがはらりと落ちた。



 キレイだった。

 ずっと一緒にいたのに気づかなかった。ミリがこんなに可愛くてきれいになっていたなんて知らなかった。


「ねぇ、あ、きて…………ん」


 肌を重ね、一つになれたことを幸せだと思った。

 体の底、心の底から幸福感が湧き上がってきた。


 俺は紗月と美里にここまで愛してもらえるなんて本当に幸せだ。



 ふたりを俺は愛している。





・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡

いつも読んでいただきありがとうございます。

今後更新は夜7時ころになります。お盆期間中は更新頻度も落ちます。

申し訳有りませんが、よろしくおねがいします。


☆を★×3でお願いしますm(_ _)m ♡で応援頂くとテンション↑↑

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る