第7話

「おはようございます。昨夜はお楽しみいただけましたか?」

 ゆさっゆさっ……身体がゆすられる感覚で目を覚ます。


「おはよ……紗月。もう少し寝かせて、って! なんでいるの?」

 学校の制服を着た紗月が俺の顔を覗き込んでいる。


「昨夜合鍵を頂いたではないですか? 今日は学校があるので念の為早くに起こしに来ました」

 そうだった。帰り際に合鍵を紗月に渡しておいたの忘れていた。


「美里さんも起きてください。あなた昨日ご自宅に帰っていませんから着替えがないですよね」

 布団の中で裸で俺にしがみついたままミリは全然起きる様子がない。


 今は朝の五時。何時もより一時間ほど起きる時間が早い。昨夜は確かにお楽しみだったので、寝不足気味なのは否めない。


 紗月は布団をめくりあげて、ミリの尻をペチンと叩く。

「起きなさーい! こんなことでは健人をシェアできませんよ」

 ガバっとミリは起き上がり、そそくさと昨夜脱いだ服を着ていく。


「はい、起きました。大丈夫です、シャワー浴びて着替えるのでいつもの時間に待ち合わせよろしく」

 一気にまくし立てると部屋を出ていった。


 因みにミリのおばさんにはうちに泊まるて連絡したら『良かったね。頑張って!』と返事が来ていた。何でみんなミリが俺のこと好きだって知っているのさ。


「では、健人。?」

 と言いながら、紗月は俺の下腹部を指差す。


「昨夜はだいぶお楽しみだったというのに元気ですね?」

 本気とも冗談とも取れるような取れないような言い方をしてくるなよ……


していないぞ。ミリもだいぶ痛がったからな」

 フフフって笑う紗月は朝っぱらからにしては妖艶すぎる。


「回数なんて聞いていませんよ? 私の時はすぐ帰られたのに美里さんとは一晩一緒ですものね。ズルいです、羨ましいんです」


「だから」と言って俺に跨ってきて、唇を塞がれてしまったので物理的にも反論できない。

 唇が離れると、つぅと唾液が糸を引き、吐息が漏れる。


「制服着衣のままがいいですか?」

 などと聞いてくるので、「シワになるよ」と答える。

 紗月はベッドからさっと降りるとあっという間に脱いで、戻ってきた。





 二人でシャワーを浴びた時点でも家を出る時間にはまだ余裕がある。

「朝ごはんにしましょう。直ぐにできますので、座っていてください」

 ニッコニコの紗月はそう言うとキッチンに入っていって、料理を始める。


 トーストとハムエッグで朝食を済ますと時間ピッタリ。


 ピロリン♪ 【通学のお時間です】


 さて行きますか。

 紗月と二人で玄関のドアを抜けると、ミリが丁度出てきた。


「もう、来なくていいから。中に入ってよッ」


「だって健ちゃんにお礼言わないと……」

 おばさん、お礼とか言われますと居たたまれなくなるので出てこないでください。


 バタンとミリんちの玄関のドアが閉まり、親子の攻防は終わったらしい。


「ごめん。行こうか、健ちゃんさっちん♪」

 ミリもニッコニコ。


 今日も徒歩での通学だ。


 さすがに三人で手を繋いで歩くわけにはいかないので、俺を中心に二人が横に来たり前後に移動したりと面白かった。三〇分も歩くと今度は俺が前を歩き、後ろで二人が手を繋いで歩く格好に落ち着いた。黒髪長髪大和撫子清楚系女子と金髪ショートイケイケご陽気ギャル系女子が手を繋いで楽しげに歩いている姿はなんとも萌える。ふたりとも俺の彼女なんだぜ、と叫びたい。




「学校に着く前にもう一度確かめておきたいんだけど、俺が二人と付き合っていることは当面の間は秘密、でいいな? 俺はあくまでモブってことで、絡んで来ないようにな。紗月とミリの仲はどうしようか? 今までそんなに交流なかったよな」


「そこは気にしなくてもいいじゃないかな? 女の子なんて何かの拍子に急に仲良くなったりするものだし」

 ねぇ~っと二人顔を合わせて笑い合っているから大丈夫かな。


「でも、美里ちゃんと健人は幼馴染だって知られていますよね。そうしたら、美里ちゃんと健人だけは普通に話してもおかしく思われないではないですか! ズルいです!」

 プンスコ紗月が頬を膨らまして怒りだした。


「じゃあ、私経由で話すようになったってテイで健ちゃんとも仲良しになっていく、ということではどうかな?」


「おお! さすが美里ちゃん。その線で行きましょう」


 おいおい、おまえら最初の俺とは絡まないとか俺の存在はモブでってことが既にないがしろになっていることに気づいてくれないかな? 無理? では、程々でよろしく。はあ……


 三人でワイのワイのいいながらも、学校手前では一応俺だけは離れておいた。あまり意味ないような気がするけど気持ちの持ちようなので、俺の心の世界の安寧あんねいのために。



 教室に入ると先に行ってもらった二人の周りには既に何人かの友だちがいて、楽しそうに話している。誰にも騒がれること無く俺は自分の席についた。


「おはよう」

 コイツはモブ1の鈴木。

「おはよ」

 こいつはモブ2の山田。

「うぃ~」

 こいつがモブ3の高橋。

「おはよう。お前らは変わらず影が薄くて安心するな」


「何だそれ」という軽いツッコミが教室に霧散する。

 モブだからって友達がいないわけではない。友だちもモブなんだけどな。




・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡

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