第5話

「で、お答えはどうします? 健人」


 どうして紗月がミリの告白の答えを聞いてくるのさ。


 ミリを見るともうビービー泣いちゃってグズグズでさすがに放りっぱなしはかわいそうなので、さっき風呂上がりに使ったタオルとティッシュペーパーを渡す。




 よし、先ずは昨日からのことを整理しよう。問題解決は順番を追わなくてはできないというから大事だ。別に目の前の事柄から目を背けようとしているわけではない。


 一、昨日同じクラスの女の子を助けたら惚れられて、しちゃったら付き合うことになった。


 二、翌日、恋人ができたのを幼馴染に知られたら、幼馴染が暴走した。


 三、幼馴染にことの経緯を説明しようとしたら、幼馴染にも告白された。


 四、告白を煽った張本人の恋人に幼馴染をどうするか聞かれている←New!


 ……うんだ。わがんねぇ~




「な、なあ紗月。なんでそんなにニコニコして見ていられるんだ? 自分の恋人が今まさに取られるかも知れない場面じゃないか?」


 泣きじゃくりタオルをスーハーしながら(なぜ?)俺に抱きついているミリとそれを微笑ましく見ている紗月に疑問をぶつける。


「取られませんよ。健人は絶対に渡しませんから。これは決定事項ですよ」


 でもね、と続ける。


「ただ美里さんが子供の頃からずっと健人のこと好きだったのは分かっていたのですよ。今朝からいろいろ煽ってやっと告白までやってきてくれました」


「どうして紗月が美里の子供の頃のことを知っているんだ」


「覚えていませんか? 私たち三人は同級生になるのが二回目ですよ。最初は小学校三年生の時ですよ」



 紗月は転勤族だった父親せいで、紗月が小学校三年になるときにこの地に引っ越してきて、四年生に上る前に再度引っ越していってしまったそうだ。たった一年間だけ同じ学校同じクラスになっていたんだ。


「……あ、さっちん」

 顔を上げたミリが俺から離れて紗月を見る。


「思い出してくれましたか?」


「あ、ああ。さっちんで思い出した。髪の毛ぱっつんで背の低い陰キャな娘だったような気がする。え? 紗月がさっちんなの?」


「陰キャな娘……なかなか酷い言い様ですね。はい、そのぱっつんが私です」


 引っ越しばかりで土地にも馴染めず、学校でも友達がなかなかできなくて暗く沈んでいた子供の頃の紗月。子供なんて残酷なもので、自分たちと同じではないというだけで虐めたり爪弾きにしがち。そんなことがまた起きるのかと鬱々としていたところに俺とミリが手を差し伸べて助けてあげた、らしい。全然覚えてない。


 昔から周囲の不協和音や不仲、トラブルが嫌いで、俺自身自分からできることは回避できるように働きかけていたからな。たぶんその一環の出来事だったのだろう。


「そうですよね。健人は今でもみんなが嫌がる仕事は率先してやっていますし、態と損な役回り受けちゃったりしていますね。あのときも、嫌な仕事を押し付けられそうになっていた私の代わりをしてくれました」


 あのときがどのときか全くわからないけど、頷いておくほうがいいかな。


「健人をフォローするように何時も美里ちゃんもついていっていましたよね。ずっと一緒にいられるようで羨ましかったです。美里ちゃんの健人好き好きオーラ凄かったですよ」


 へ? これっぽっちもまったくもって気づいていませんでした。


 ミリが真っ赤かになってしまって「あうあう」言っています。


「もちろん私も大好きだったんですよ、健人」


 一年でまた引っ越してしまってけど、たくさんの元気を貰ったから次の学校からは友だちもたくさんできたんだと笑う。


「初恋は叶わない、なんていうではないですか。だからもう諦めていたのですが、またのこの地に来ることができました。しかも健人たちと同じ学校で同じクラスになれたんですよ。

 子供の時と変わっていない二人、美里ちゃんの金髪にはビックリでしたけど、に会えて嬉しかったですし安心もしました。でも、私に対する反応をみると忘れられてしまった事がわかりました。ちょっぴり寂しかったですよ」


 陰からこっそりと見るだけで恋は諦めようと思っていたが、俺とミリは付き合っていないようだしもしかしてワンチャンあるかもって俺の行動を見ていたら、あの暴漢に囲まれて、アレヤコレヤで現在に至る、と。


「さっきも言いましたが、健人を取られるなんてとんでも有りません。絶対にありえません。ですが、私は美里ちゃんも恩人だと思っています。美里ちゃんのことも大好きです。美里ちゃんの健人に対する想いも痛いほど分かります」


 紗月がミリの手を取り両手で包み込むように握る。





「なので、健人を美里ちゃんとしたいと思います」



 ………………

 …………

 ……は?



「いかがですか? 美里ちゃん。二人で健人を共有するのです。どれだけ健人を専有できるかなどはこれから二人で決めていきませんか?」


 キョトンとするミリ。


「これならどちらかが笑いどちらかが泣くと言ったことも起こりません。win-winの良いアイデアだとは思いませんか?」


 キラリとミリの目が光る。


「さっちん。私が断ると言ったらどうする?」


「ふふふ。絶対に渡さないといいましたよね」


「いいんじゃないかな。さっちんとウチで健ちゃんを共有するなんてステキね」


 ガッチリと握手を交わす紗月とミリ。










 ねえ、俺の意見とか意思はどこにもないのかな?






・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡・.。*☆彡

今後更新は夜7時ころになる予定です。お盆期間中は更新頻度も落ちます。申し訳有りませんが、よろしくおねがいします。


あと…………あまりいいたくないんだが……☆がほしい

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