第2話
これってピロートークってやつなのかな?
「なあ、紗月。衝動的にしちゃったけど俺で――」
紗月は俺の唇に指を当てて、言葉を止める。
「私は健人で良かったと思っていますよ。確かに順番はおかしいとは思うけど、
そう言われてしまうと返す答えが出なくなってしまう。
「――そうか。でも、俺は紗月のこと殆ど知らないし、紗月も俺のことなんか知らないだろう? そんな状態でいきなり恋人同士って言うのもやっぱり変じゃないかな?」
世の中にはエッチが先で、その相性を一番と考える人達もいると聞くけど、少なくとも俺は違うので戸惑いしかない。
「健人は難しく考えてしまうのですね。恋愛の形なんてそれぞのカップルの数だけあるんですよ。私達は私達でこれから築き上げていけばいいのではないですか? 健人はあの暴漢に襲われているのが私ではなくても助けたでしょ? 私と気づいても変に恩を売って近づこうとかもしなかったでしょう? もうそれだけでも私は貴方を選ぶ理由なのですよ。……あと、健人のことは学校でも見ていましたからね」
だから貴方のことが好きです、と言って俺の鎖骨に噛み付いてチューチュー吸った。
「えへへ、私のしるしつけちゃいました」
『私にもたくさんつけて』、というので首は
「やりすぎちゃったかな? 明日大丈夫? 誰かに見つけられちゃわないかな?」
「大丈夫ですよ。全部服で隠れるところばかりですもの」
交際してないだの何だのと言う割には、こういうことをしてしまう自分が情けないが、あまりにも紗月が魅力的なので仕方ない。仕方ないんだよ。
暫くのベッドでいちゃついていたら、紗月のお母さんから『これから帰宅する』とメッセージが入ったので俺も帰ることにした。
「じゃあ、また後でメッセージ送るな」
メッセージアプリのIDを交換したので、後でゆっくりと話ができる。
(夕飯の用意をするのが面倒くさいな。アレも買ってくるようだし、コンビニ行ってくるか)
自宅に戻らずそのままコンビニに向かった。時間帯が悪かったみたいで
エレベーターホールで箱が降りてくるのを待っていると後ろから声を掛けられた。
「よっ、健ちゃん」
振り返ると、金髪ショートの女子が手を振っていた。彼女は
「
俺は子供の頃から彼女のことはみさとではなくミリと呼んでいる。
「ウチらは創立記念日で学校休みだけど、世間は平日だからね~こういう時は稼いでおかないと」
そうか。今日は何で休みなのかと思っていたら高校の創立記念日だったのか、知らなかった。
「そっか、おつかれ」
「何だよ。それだけ? 健ちゃんはもう少しウチを労ったほうが良いと思うぞ」
「労ったところで何も出ねぇじゃん。労うならミリのおばさんを労うよ」
俺の両親は帰りが遅い、というかほぼ帰ってこないので偶にミリのお母さんに食事を作ってもらっていたりする。俺のおふくろの味はミリのお母さんの味になっている気がしないでもない。
「健ちゃんは今日はコンビニ弁当なのか? どうせなら夕飯食べにウチ来る?」
「いや、ありがと。もう買っちゃってきちゃったし今日は良いよ」
紙袋に入ったアレは見せられないし、袋を引っ張るなよ。伸ばしてきたミリの手を退かす。
「そっか……。あのさ、健ちゃん。女ンところ行ってた? というか彼女でもできたのか?」
ぎくっ……
「なんか、健ちゃんがつけないようなコロンの甘い匂いがするんだよな。白状する?」
冗談なんだか本気なんだか分からない視線を俺に向けてミリが俺のシャツを引っ張るので首元がはだけた。
ミリが一瞬目を見開いた気がしたけど『冗談、冗談』と言いながら開いたエレベーターの扉をくぐっていく。
「乗らないの? 行くよ」
俺は無言でエレベーターの箱に乗り込んだ。
「じゃ、また明日。寝坊しちゃだめだからな。ウチは起こさないぞ」
会話から分かるかも知れないが、ミリと俺は同じ高校。しかもクラスも一緒だ。幼馴染で昔から知っているせいか学校でも人気の美少女だけど俺はミリを女として見てない。あっちも俺のこと男としては見ていないだろうけどな。
さっき目を見開いたのは鎖骨のコレ見られたのかな? 見られたからってどうこういったものではないけどちょっと身内にバレたようで恥ずかしいよな。
コンビニ弁当を食って、風呂入った後は紗月にメッセージを送る。
『初メッセージ! 届いているかな?』
『男の子とやり取りするのって始めてで新鮮です』
『紗月ってモテそうだから男とメッセージのやり取りぐらいしているものだと思ってた』
『ヒドイなぁ……私の始めてはみ~んな健人に上げているんですけど? けどけど』
さっきのこと思い出して急に身体が熱くなる。
『あ、ありがとうございます』
『何でとつぜん丁寧なの?』
笑っているうさぎのスタンプが添えられてきた。
暫くメッセージを送り合ったあと、寝ることにした。
お母さんに聞かれると恥ずかしいからって文字でやり取りしたけど、いつも学校で見る篠田紗月っぽく無くてすごく新鮮で良かった。
明日七時にマンションのエントランスで会って学校行こうって言ったら、早すぎるって驚かれた。だって俺は一時間掛けて歩いて学校に行っているんだもの。自転車通学の紗月と接点が今までなかったことに納得したわ。
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