ふたりで……シェア希望らしい、です?
403μぐらむ
第1話
いつものように
昼間は大勢の子供達が遊んでいたであろう公園も今や
公園を抜けきる直前に目の端に人影があることに気づいた。恋人たちの時間にはちょっと早い気がするが気の早いカップルでも居るのかと顔を向けた。向けてしまった。
一人の女の子をどうにもガラの悪そうな男三人が囲っていた。
(はあ、見て見ぬ振りも気分悪いよな……しょうがない。助けるか)
(しかも見覚えのある制服。……うちの高校のだよな)
「おーい。なにやってるんだ?」
「何だてめえは!」
(お〜テンプレクズ野郎だ)
「いやぁどう見たって嫌がっている女の子を寄ってたかって脅して襲おうとしてたでしょ?」
「ああん? うるせぇなっ! おい、お前らやっちまえ」
リーダー格(?)が子分をけしかけてきた。
子分Aの攻撃! 重心が片足に掛かる前にちょと引っ掛けて転ばす。子分Aは勝手にひっくり返って倒れてしまった。
子分Bの攻撃! ケリを入れてきたが、遅いのでその脚を腕で避けたあと肩を少し強めに押してやる。子分Bは体勢を崩して植え込みに突っ込んでいって行動不能になった。
次はリーダー(仮)の番か? と辺りを伺うが居ない。
さっきの娘が指差す先を見ると向こうの方で背を向けてダッシュで逃げていく姿がうっすら見えた。
「た、助けていただきありがとうございました。わ、私、
「あ、うん。知ってる」
途中でこの娘が篠田さんだと気づいていた。黒髪ロングの色白美人さん、まさに大和撫子って感じの女の子。
「え? もしかして住澤くん?」
そう、俺は
「うん。篠田さん、大丈夫?怪我とかしていない?」
「大丈夫です。それにしても住澤くん強いんだね。びっくりしました」
足引っ掛けて避けてちょっと押しただけなんだけどね。
「小さい頃から両親が忙しくて家に居ないものだから護身術的なやつちょっと習っていただけなんだけどね。家は近いの? 送っていくよ」
さっきの今じゃまだ怖いだろうし、暗くなってきたからね。
「ありがとうございます。お願いできますか?」
篠田さんは俺の腕に抱きついてきた。
「えっ」
「まだ怖いですから」
篠田さんからすっごくいい匂いがしてきて頭がくらくらする。さっきのクズ男共より攻撃力高すぎなんだけど。
「このマンションの七階が私のおうちです」
「え? マジ」
「はい。何か?」
「俺んちはこのマンションの五階なんだ」
びっくりだ。こんな偶然てあるものなんだな。
「……じゃ帰りの時間気にしなくていいですね」
「ん? なにか言った?」
「いいえ。では丁度いいので私のおうちに寄ってください。先程のお礼をさせてください」
「いや、お礼なんて、俺何もしてないし」
「お礼がしたいんです。お願いします」
ぐぐっと迫られた。顔が近いって!
「わ、わかった。伺わせていただくよ」
篠田さんの家に行くとお父さんは出張中でお母さんは夜が遅い帰宅のようで、静かだった。間取りがうちと変わらないのに置いてあるものが違うせいか違う世界に迷い込んだ感がしたりする。
「ソファーに座っていてください。今、お茶の用意をしますね」
篠田さんは自分のだと思う部屋、俺の部屋もあの場所だし、に持っていたかばんを置くと台所に入っていった。
「別に本当にいいんだぞ」
「いいえ、それでは私が落ち着かないのです。だからお願いします」
ここまで来ておいて、お茶の一つを断るのもなんなので頂くことにする。
「粗茶ですがどうお召し上がりください」
風貌と口調で大和撫子感が増して落ち着かない。それに、篠田さんの座る位置が近すぎるんだよ、大きいソファーなのに俺の真横でほぼくっついているんだけど?
「し、篠田さん。近くない? 座る場所近くない?」
「そんな事ありませんよ、住澤くん。普通ですふつう」
「あ〜あの、俺臭くない? さっきまでランニングしていたから汗かいているし」
言うんじゃなかった! 「そうですか?」って言って、篠田さんは俺の胸に顔埋めてきてクンクン匂いを嗅いできた。
「大丈夫ですよ。むしろいい匂いです。……私が好きな匂いですよ」
美少女に汗臭いTシャツの匂い嗅がれるのってなんのご褒美なの? いやもう篠田さんは俺に抱きついて、俺の胸にグリグリ頭なすりつけているしどうしたのぉ??
俺は暫くの間どうすれば良いのかわからずバンザイ状態でいる。
「住澤くん、ううん、健人さん……私、なんだか身体が熱いの……火照るの」
どどど、どうしたの? トロンとした目で篠田さんは俺の胸から見上げてくる。
「篠田さん?」
「紗月って呼んでくれなきゃイヤ」
「え、じゃ、じゃぁ、紗月? どうしたの? 風邪引いて熱でも出たの?」
状況的に違うだろうなとは思うけど、経験ないし判断できないよ……
「すごくドキドキして、お腹の奥のほうが熱いの」
俺の風邪発言はスルーされて、紗月は俺の手を取り彼女の胸に持っていく。
「ううううん、すごくドキドキしているね。おおおおれもドキドキしているよ」
紗月は俺のTシャツのなかに手を入れて直接肌に触れてくる。
「本当ですね。ドキドキしています。……健人はこんな事する女の子嫌いですか?」
「き、嫌いなわけないじゃないか。さ、紗月は美人さんだし、嬉しいくらいだよ」
「うれしい……」
と言って急に唇を重ねてきた。
どうして? どうなってしまうんだ? と疑問は浮かんでくるものの直ぐに頭ン中が熱く熱く真っ白になる……
――いつの間にか俺たちは何度も唇を重ね続け、深く強く舌を絡ませていた。
ゆっくりとソファーから立ち上がった紗月は俺の手を引き、さっきかばんを置いた部屋、紗月の部屋に俺を誘う。俺と紗月はずっと見つめ合ったままゆっくりと入っていった。
パタリと扉が閉まる。
交際もしていないのに身体を合わせ一つになっていいのかなんて思うこともあるけど、このとき実際にはなんにも考えてなかった。ただただお互いを求めるだけだった。ちなみにアレはご両親のお部屋から拝借しました。
俺たち、お互いの
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