第三十八回 夢中になれること。


 それは、アクリル絵。


 百号のキャンバスに挑んでいる。



 白い世界の一階。

 芸術棟の一階だ。……静かな時間と静かな風。


 冷たくはなくて、熱くもなくて、

 ソフトに包み込むの、人肌ほど。



 着飾らない姿で、

 何も着ない姿で、

 令子れいこ先生も僕も、満面な笑顔で戯れる。


 着色を重ねキャンバスに、

 戯れる。絵の具で戯れる。



 そしてポエムにも夢中で、

 今日も綴るの。葉月も十二日目。


 明日になると、

 会えるの、また。


 ――千佳ちか先輩に。


 アドレスはもう既に交換していたから。


 千佳先輩には彼氏がいる。

 そのことも、知っていた。


 ひっそりと密かに……梨花りか先輩が教えてくれた。何故そうなったのか? それは僕が千佳先輩を大好きだと……そう言ったからだ。ううん、告白したからなの、この前。


 百合とはいうけど、ちょっぴり酸っぱく苦い……失恋の味を覚えたの。



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