第十回 その人は、僕のナイトなの?


 ――カタカタと、車輪は音を立てつつ。



 久しぶりに触れる、柔らかな土の感触。

 そして、草の匂い。



 一年三百六十五日とすれば、

 今日は何日目……ううん、何百日目なのかな?



 僕は転んだ。

 ――大地に。


 涙で濡れた顔だけど、

 僕と同じように転んだ車椅子を、


「よいしょ」と爽やかな風の中で、

 声を立て起こしてくれる女の子。



 その女の子が、僕のその……濡れた顔を見る。

 ということは、僕もその……女の子を見たの。


「大丈夫?」

 と、リアルな声。こんな間近に。


 いつも窓の外から見ていた、三人の中の一人。


 よく似た二人の中の一人で、――ええっ? と、驚くほどにふわりと、

 僕を……僕の体を抱え、車椅子へとリターン。……と、乗せてくれた。


 白い体操着に臙脂の短パン。ショートボブの、活発そうな女の子……


 女の子だけど、僕にはナイト……かな?


 胸のゼッケンには、二年生。……『梅田うめだ』とデカデカと書いてあった。



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