第54話 VRホラー開始




 壁一面がコンクリートの殺風景な部屋みたいだ。


「倉庫っぽいね」


 ファレナちゃんの声が少し反響して聞こえてくる。


 倉庫や物置で見るようなスチール製の棚が並べて置かれた室内で、段ボール箱がズラッと並んで置かれているのが分かる。


「懐中電灯やランタンとか探してみよう」

「埃が凄い被っとるとな、ずっと使われてないようじゃぞ」


 珠音がパパっと閉じた段ボール箱を手で少し払っただけで、ぶわっと埃が宙に舞う。


「ケホッけほっ。凄いのう」

「小物とかが入ってるだけっぽいね~」


 あまり埃をまき散らさないなよう、丁寧に開きながら中身を皆で確認していく。


 段ボール箱を探し回ろうとして、すぐに【目星】と【幸運】でダイスが振られる。


「この勝手に転がる感じ、慣れないよね~。すっごくビックリするもん」

「意図してないのにダイスの転がる音が聞こえてくるからね、怖いよね」

「運に行動を左右されるとはのう」


 悠月:【目星】《56》成功。【幸運】《32》成功。

 珠音:【目星】《40》成功。【幸運】《78》失敗。

 ファレナ:【目星】《68》失敗。【幸運】《24》成功。


 ダイスの結果が出た後に、キラッと光ったように見えた半開きの段ボール箱を除くと、そこには懐中電灯とランタンがしまわれていた。


 棚の欄にも緊急用品と微かに書かれているのを見つけた。


「この棚を集中的に調べよう」

「そだね、こっちの段ボール箱は私が見るよ」

「なら、上の方にあるモノは我が見よう」


 皆を集めて他に使えそうなモノが無いかを探す事にした。


「こっちは電池を見つけたよ~」

「懐中電灯とランタンを見つけた」

「我は懐中電灯だけじゃな」


 これで全員灯りを手に持つことが出来る。


 それにしても、電池があるって事は下手すると懐中電灯って電池切れするのか、ゲームだからその辺は緩いと思ってたのに、ご丁寧にランタンまであるし。


 なんで灯りが二種類もあるんだろう。


「珠音、ランタンお願いね」

「うむ、任された」

「この黒い布で覆えば、いざって時に灯りを隠せるよ~」


 カーテンの生地みたいだけど、大きさは手拭くらいしかない。


 大きさ的に小窓くらいだろうか、それが何枚もある。もちろん、大きなカーテンもあるけれど、そのどれもが光を通さないようするよな、厚手の真っ黒な生地だ。


 もっと明るい色があっても良い様にも思うんだけど……。

 何かから隠れる為に増改築をしている屋敷なら、コレが一番なのかな。


「他には使えそうなのは無いと思うよ?」


「次は隣の部屋に行くか?」


「何か危ないモノがあったら、すぐに閉めて逃げれば良いしね~」


「そうだね、ちょっと怖いけどそうしようか」


「何も分からぬ部屋じゃかな~」


 全員が失敗したのは意外にも、僕等の恐怖心を煽ってくる。



 何も分からない恐怖の方が自分的に怖いな。



 他の二部屋は何か音がなっているし、不明な隣を除くだけなら問題ないだろう。





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