第48話 VRホラー開始



「さぁ、それじゃあ休憩終了でもうすぐ開始だよ」


 イケメンお兄さんが重い腰を上げる様に立ち上がって声を掛けてくれる。


「良いですか、次は私を助けに来てくださいね」


「いいや、駅を選べよ」


 ギュッと両腕に抱き着かれて、しばらく引っ張られているのをフィオナちゃんが割って入ってきて救ってくれる。


「ほらほら、もう時間ですから自分達の場所へ行ってくださいね~」


 グイグイと二人を押し出して、ヒラヒラと手を振って送り出している。


 晶さんも楓さんも、物凄く恨めしそうにフィオナちゃんを睨みながら、とぼとぼ肩を落として自分達がさっきまでプレイしていた部屋に戻って行く。


「フィオナちゃんは次からは、僕等と同じ場所でやるの?」


「そうだよ~、休憩が終わったら二人と同じ部屋に行くように言われてたからね」


「ふむ、仲間が増える訳じゃな……頼りなさそうではあるがな」


 ゆっくりと休んで元気になった珠音は、体を伸ばしたり背筋を逸らせたりして準備体操をしながら僕の後に付いて来る。


「ねぇ、珠音ちゃんは何か言ってたの?」


 僕が珠音を見ていたのに気付いたようで、女の感なのか知らないけどフィオナちゃんが敏感に察して、僕の服をクイクイ引っ張って何を言っていたのかを聞こうとしてくる。


「人数が増えるから楽しみだなって言ってたんだよ」

「ふ~ん……本当に?」

「う、うん。本当だよ」


 ジッと目を合わせようとしてくるとので、耐えきれなくなって視線だけを外してしまう。


「そう、まぁ良いけど」


 なんて居ながらもフィオナちゃんは、脇腹を突いたり摘まんだりしてしながら僕を攻撃してくるのを止めなかった。



 ♦♢♦♢



「休憩はしっかりできた?」


 母さんがメイド服のままで僕等を出迎えてくれる。


「はい、ちゃんと休みました。よろしくお願いします」


 元気よく返事をして、勢いのままにお辞儀をした。


「後半もよろしくお願いします」


「えぇ任せてちょうだい」


「引き続きよろしく頼むのじゃ」


 ちょっとフワフワしながら珠音も母さんに向かって挨拶をしながら片手を上げて、何故か母さんとハイタッチを交わしている。


「はぁ~……憂鬱だ~」


 どんよりとした空気を纏いながら、眼鏡先輩が僕達の後に続いて入ってきた。


「しっかりしてくださいよ、まったく」


 ノートパソコンを片手に小さい女の子が続いて入って来た。


「うげっ、奈々先輩までいるんですか」


「もちろん、最後まで一緒よ」


 綺麗な笑顔でフィオナちゃんを見てから、僕をジーっと見つめる。


 すると、すぐに僕を隠す様にフィオナちゃんが奈々先輩との間に入ってくる。


「何もしないよ?」


「ダメです、知ってるんですよ……奈々先輩は紬ちゃんみたいな子が大好きだって」


「……ちっ」


 聞き取り難かったが、確かに奈々先輩が舌打ちした音が聞こえた。


 それでも聞き間違いかと思ったのは、表情は一切変わらずの笑顔だったからだ。


「まぁいいや、ゲームを楽しみましょう」


 可愛らしい笑みで僕の前に手を差し出してくる。


「は、はい」




 出された手を取って握手した瞬間に、奈々先輩の口端が微妙に上がった気がした。



「じゃあ早く始めましょうか」




 フィオナちゃんがすぐさま僕と奈々先輩の手を引き剥がした。





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