第47話 初VRホラー開始


「紬ちゃん、後半も頑張って行こうね」


 ずっと大人しかったフィオナちゃんが僕の隣まで来て座る。


「ちょっとフィオナ? どういうこと?」


 楓さんは少しムッとしながら僕達を恨めしそうに見てくる。


「自分は必死に戦ってたっていうのにさ」


 晶さんはなんか知らないけど、げっそりして机に突っ伏して顔だけを向けてくる。


「ぷふぁ~、ゲームをしてるだけじゃが結構に疲れるものじゃな」


 随分と大人しいと思ったら、ジュースを飲むのに夢中のようだ。


「皆はどんな感じのゲームなの?」


「ゲーム開始時から悲惨だったわよ。知っているゲームの画面だったから少し安心してたんだけどね。ゲームをスタートしたら全く違うゲームが始まったんですよ」


 物凄く怖かったという感じで、僕の慰めてと言いながら人形の様に抱っこされる。


「あの、僕はマスコットじゃないんですが」


 子供じゃないんだけど。この人達は僕が男って意識してくれていないようだ。


「そうだよ~、私が先に隣に座ってたのに無理やり割って入ってきて~」


「いや、恥ずかしいから、誰でも勘弁して」


 顔が赤なってるのが自分でも解るぐらい、ちょっと熱くなっている。


 けど二人とも全然、僕の事を気にしてくれない。


「自分の方は虫が襲ってきて、それを駆除しまくってたんだぞ。虫とか大っ嫌いなのに」


 いつもの雰囲気と違って涙目で訴えてくる晶さんはちょっと可愛かった。


「変な化物に追われるより良いじゃない。廃ビルで逃げ回るしか術がないのよ」


「大量の巨大な虫に追われてみろって。恐怖しかないから何とか駅に逃げ込んで耐えてるけどさ~」


 顔だけを机にのけてぷっくりとほっぺを膨らませて、ちょっと拗ねた感じで言う。


「私なんて日本のお屋敷で勝手に怖い場所まで移動させられて、怖い体験をさせられてたんです~、そこに颯爽と紬ちゃんが現れてくれたんだよ~」


「なんで、貴方の所が一番に合流するのよ」


 悔しそうにフィオナちゃんを睨むも、それを誇らしげに胸を楓さんに自慢気な態度を見せて、物凄く嬉しそうな顔で煽っている。


「なるほど、僕達が見た本の絵は皆の所に繋がってる絵だったんだ」


「どういう事ですか?」


「ゲームを開始したら巨大な本があって、そこに三つの絵があってね。初めに選んだのが和風建築のお屋敷だったから」


 ニコッと微笑んで楓さんが僕の両手を掴んでくる。


「じゃあ次は私の所に来てくださいね」


「あっ⁉ ズルいぞ。選ぶんなら駅の絵を選べよ」


「まぁ、私達の所が終わったらだから、今回で合流できるかは分からないんじゃないかな~」


 もう僕と珠音が一緒なので随分と余裕でいるけど、人数が増えてるから色々な要素が増えていそうで怖いんだけど。



 あの父さんの事だしな、手を抜く真似はしないだろう。


 

 増えた分だけ何かを追加してくると思ていた方が良い。




 先輩達もなんかその辺の事は分かっている様で、今から身構えているみたいだし。




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