第46話 初VRホラー開始




「はいはい、色々と脱線したけど、休憩後の事を話すよ」


 父さんがパンパンッ――、と手を叩いて僕に集まった視線を解いてくれた。


「後って、さっきまでと同じだろう?」


「結構変わるよ、彼女等には徐々にだけどコメントを画面端に見ながらやってもらうし、君達にも同じようにやってもらう」


「あ~、アレは確かに慣れが必要だな」


 父さんの説明に残念なイケメンお兄さんが腕組みしながら、天井を見上げて声を上げた。


「そういえばVRだとどう見えるんですか?」


 楓さんがその様子みて不安げに質問する。


「あ~、慣れないと難しいかもにゃ~」


「二通りの設定があって、画面端に映し出すタイプ。もう一つは腕時計みたいに表示するタイプがあるよ。どっちもメリット・デメリットがあるけどね」


 画面端に映し出されるタイプは視線だけを動かさないと目で追えない感じだ。画面端に出てくるので顔を動かしてしまえば、コメント欄も一緒に動いてしまう。


 眼鏡の端にシールを張って見ると分かりやすいだろう。


 シールを見るには目だけを動かして、シールの場所を捉えないと見る事ができない。


 体や顔が無意識に動いてしまう人には、本当に訓練が必要なレベルだ。


 けれど、コレが出来ればVR系ゲームをしていても、何時でもコメントに反応してあげる事が出来る。


 レースゲームで体が一緒に動いてしまう人には、ちょっとキツイかもしれない。


 逆にしっかりと見れる表示タイプ。


 コレはどうしたって一度止まってしまう事になる。走りながらでも見れるけど、片手が確実に使えなくなるので行動は制限されるだろう。


「慣れたらカッコ良さそうだね」


 晶さんが言うよに、見た目にも分かりやすいからカッコ良くは見えるかも。


 父さんとアシスタントさん達が創ったのか、一つ一つを大きなスクリーンを出して、スライド絵を使って細かく説明してくれる。


 先輩達は一足先に体験していたようで、ある程度は自分に合った方を決めているようだ。


「僕は画面端で良いかな、あまり行動制限とかされるのって慣れないし。誰かのコメントが流れてるのが見える方が怖さも半減する――」


「あぁ、もちろんだが、恐怖演出が部分では初回に限り視界端から消えるから」


「えっ⁉ だ、出してても良くないですか!」


 フィオナちゃんが慌てた様に立ち上がって、高く手を上げて抗議している。


「気を付けろよ、ここでそれを言うって事はな、画面が消えなくていきなり恐怖演出を体験させられるかもしれないですよ」


 眼鏡先輩が呟く様にいうが、しっかりと皆に聞こえる感じで喋ってくれた。


「おいおい、バラさないでよ」


 父さんが笑いながら眼鏡先輩の肩を叩いた。


「いたっ! 痛いっす⁉」


「それじゃあ、もう少しゆっくりと休憩しててね~。なんなら置いてあるお菓子とか摘まんでさ、しっかりと回復しておいてね」


「ちょっと、放してください。わる、悪かったですから~」


 眼鏡先輩を引きずりながら休憩室を出て行った。


「後輩達よ……しっかりと休んでおけよ」


 なんかイケメンお兄さんが顔を青くして僕等の方を見て言う。


「にゃ~、後半はマジでキツそうってことだにゃ~」



 猫目の先輩は机に突っ伏して倒れ込んでしまう。



「ヤル気がある時のユウビ先輩は……危険です」



 いつの間にかノートパソコンを閉じて、しっかりと休憩を始める小さい先輩。



 僕等は全員をお互いに見ながら息を呑み込んだ。



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