第44話 初VRホラー開始
光の糸をだとっていくと、本当に明かりのついた部屋に辿り着いた。
本が収められた台座があり、そこに触れると本が勝手に開いて浮き始めた。
空中に文字が飛び出してきて、皆で驚いたけどそれ以外は特に何も起きない。
浮き上がった文字は【セーブ休憩】【中断】【終了】の文字だった。
とにかく眼鏡先輩に言われた通りにセーブ休憩を選択すると、画面が真っ暗になる。
「もう外しても大丈夫よ~」
聞きなれた母さんの声が耳元で聞こえてきた。
「……いつの間に此処に来たの?」
「あら、最初から居たわよ? じゃないと珠音ちゃんと一緒に出来ないでしょう」
「VRゴーグルなんかをせ、セット? してくれたのは母上じゃからな」
僕の後にテキパキと準備をしてたのが母さんだったのか、気付かなかったんだけど。
「私のメイク術、凄いでしょう」
普段、家に居る時は面倒臭いといってメイクなんてしないくせに、こういう悪戯感覚の時は全力で化けるんだもんな。
変わり過ぎだよ。そりゃあ、いくら子供だって言っても分からんて。
女の子は何時でも変身出来るのって子供の時から母さんに言い聞かされてきたけど、なんでその事を母さんに教え込まれなきゃならないんだよ。
「ほら、休憩に行ってらっしゃい。みんな待ってると思うから」
「他の皆も休憩?」
「えぇ、初めてのプレイ配信だし、時間を区切ってやろうって決めてあったのよ」
「紬~、早く行こぞ~」
もう待ちきれないとばかりに珠音がクイクイと引っ張ってくる。
「あぁ、分かったから。じゃあ行ってくる」
「それじゃあ失礼するぞ母上」
「は~い、ゆっくり休んでね」
ひらひら手を振って見送ってくれる。
♦♢♦♢
休憩室と書かれたプレートが掛けられている部屋をノックしてから室内に入る。
「紬ちゃ~ん、助けに来てくれてありがと~」
入った瞬間にファレナちゃん……じゃなくって、ソフィアちゃんに全力で抱擁された。
「ちょ、あのっ⁉」
いきなりの事で戸惑い、抱き返す訳にもいかず両手をワタワタと羽ばたかせていると、楓さんがすぐに助けに来てくれた。
「こ~ら、引っ付き過ぎよ」
「あ~ん良いじゃんか~、私の国では挨拶ですよ~」
「その割には全力で抱き着いていた感じだったぞ?」
「だって~、助けに来てくれたのが嬉しくってさ~」
ソフィアちゃんが何故か嬉しそうに自慢している。
その様子に楓さんが眉をピクピクさせて、若干だけど不機嫌になっていく。
「そう、それは良かったけど此処は日本なの。節度と礼儀をもって行動なさい」
「お堅い委員長みたいなこと言って~。実は羨ましかったり?」
「違います」
「……即答してどうするよ。顔真っ赤だし」
「晶はどっちの味方なのよ⁉」
「いや、どっちの味方でもないんだけど」
この三人は本当に平常運転で落ち着くな。果歩姉ぇ達を見てる感じがする。
性格は其々に全然違うけれど。
珠音が静かだなっと思って周りも見回すと、一人で机に置かれた麦茶をコップに注いでコクコクと飲んでいた。
一人だけ抜け駆けとはズルいじゃないか。
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