第43話 初VRホラー開始




『妙に乗り気なヤツが多いと思ったが……はぁ、まともな女性陣が周りに少なすぎないか』


 眼鏡先輩が頭を掻き乱しながら、しこたま叫んでようやく落ち着きを取り戻す様に大きく深呼吸を繰り返しす。


「なんか、大変そうですね」


 悲壮感が漂うため息を漏らした姿が、つい慰めたくなってしまう。


『分かってくれるかい』


 パッと顔が晴れやかに明るくなって、僕にすり寄ってこようとした眼鏡先輩を珠音が立ちはだかる様に僕の前に飛びだし、先輩を叩き落とした。


「不埒者が、悠月に近付くでない」


「感動の再開の邪魔をしないでよ」


 ファレナちゃんと珠音に思いっきり叩き落とされる。


 ベチンと畳の床にへばりつくように感じで引っ付いた。


 ちょっと生々しいくも、痛そうな音がしたけど大丈夫だろうか。


『コレだら魂など要らんのだ。自分には二次元の乙女しか愛せんな』


 眼鏡をクイクイッと上げて一息つくと、気を取り直しながら高く飛び上がる。


「大丈夫ですか?」


 高く飛ぶまでに少しフラフラしていたので、ちょっと心配だ。


『……天使っ! はっ、殺気⁉』


 コロコロと態度やら顔色が変わる先輩だな。


 なんか僕の後ろを見て怖がっているようだけど、驚かそうとしている様には見えない。


 振り返ってみてもファレナちゃんと珠音が居るだけだ。


『コホンっ、そろそろ二時間くらい経つが、休憩するか?』


 急に取り繕うように咳払いして、話題を切り出した。


「もうそうんなにやってたんですか」


「気付かんかったのう」


「そう、ですね。少し休む?」


 僕自身は緊張のせいか、あんまり疲れた感じがしない。


 どっちでも良いし、二人に委ねよう。


「うん、流石に叫び過ぎて疲れたよ~」

「我はどっちでも良いぞ」

「じゃあ休憩で、お願いします」


『それじゃあ、よっと……これで良いかな』


 何か光の糸みたいモノを指先から出して、道を示すように伸びていった。


「何ですか、コレ?」


 伸びていく糸を目で追いながら眼鏡先輩に聞く。


『そいつがセーブポイントまで案内してくれるぜ』


「ここですぐに休憩って訳じゃないんですね~」


『まぁ、誰かさんがこっち側のギミックを総当たりしてくれたせいで、色々と追加せにゃならなくなったからな』


「奈々先輩に言ってください。私のせいじゃないで~ス」


『それは理解している。だから休憩がてら追加する要素があるから、こっちも時間が欲しいという訳だ。また一段と楽しめるぞ』


 それじゃあ聞くだけ聞いて、強制的に休ませる気だったんだね。




 ファレナちゃんが物凄く嫌そうな顔をして、僕に隠れる様にくっ付いてきた。



「はぁ~、喉が湧いたよ~」



 僕らが来るまでず~っと叫びっぱなしだったんだろうな。




 まだ涙目なファレナちゃんを撫でて落ち着かせる。



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